常石造船は4月30日、広島大学大学院工学研究科と2013年度の共同研究に関する報告会を本社常石工場で開催した。
この共同研究は2004年6月に包括的研究協力協定を締結して以来、今年で10周年を迎え、これまでに多くの研究成果が新造船に採用されているという。
同社と広島大学との共同研究は、性能、構造、艤装、環境の4つの分野で進めている。研究テーマは、10年間に延べ57件。研究の成果は、波浪抵抗を少なく燃費向上を実現する船首形状などの具体的成果につながった。そのほかにも、高効率かつ省エネに貢献するプロペラと舵の設計なども開発し、同社グループの建造船に順次導入されている。
さらに、アンカーチェーンの振動による共振現象を研究した論文が、日本船舶海洋工学会の2012年度論文賞を受賞するなど、応用技術のみならず海事分野の学術振興にも貢献した。
今後は、船員の労働環境の向上をめざして、居住区内の騒音や空調に関する研究のほか、生産現場における効率的で安全な建造方法など、研究分野を広げて活動を進める計画だという。
広島大学大学院 工学研究院安川宏紀教授は、「10年の間に、常石造船の研究ニーズと広島大学の研究機能を持ち寄り、多くの研究成果を生み出すことができた。今後は、大学の大きな使命の一つでもある教育機関としての機能を常石造船の人材育成に役立ててもらいたい。」と、共同研究について述べた。
また、同社設計本部 商品企画部の施建剛次長は、「常石造船と広島大学との共同研究の成果の多くが建造船に採用され、省エネ船の実現など顧客価値向上に貢献している。新技術をいち早く投入し、商品の優位性を確立していきたい」と共同研究について説明した。