米裁判所 ロシア製ロケットエンジン購入差し止め命令を解除…制裁措置には抵触せず

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打ち上げ前のAtlas Vロケット第1段尾部、RD-180エンジンが見えている。
  • 打ち上げ前のAtlas Vロケット第1段尾部、RD-180エンジンが見えている。

2014年5月8日、ユナイテッド・ローンチ ・アライアンス(ULA)社は、アメリカ連邦請求裁判所から「RD-180」ロケットエンジン購入差し止め令が解除されたと発表した。

ロッキード・マーチン、ボーイングの合弁企業で、アメリカの政府系衛星打ち上げ「EELV」計画を担うULA社は、ロッキード・マーチンが製造する「Atlas V」とボーイングが製造する「Delta IV」などのロケットを運用している。NASAの火星探査機「MAVEN」や地球観測衛星「LANDSAT 8号」などを打ち上げたAtlas Vロケットの第1段エンジンには、ロシア企業NPO エネゴマシュ製の「RD-180」エンジンを採用し、同社とプラット&ホイットニーの合弁企業RD AMROSSを通じて購入している。

2014年4月25日、米スペース X社は、米空軍がULAに対し防衛衛星36機の打ち上げ調達で合意したことに対し、独占的な受注であるとの行政訴訟を起こした。スペースXのイーロン・マスクCEOはかねてよりAtlas Vロケットのメインエンジンがロシア製であることにも言及しており、ULAのRD-180購入はドミトリー・ロゴージン副首相が率いるロシア連邦の宇宙産業の利益となり、ウクライナ情勢に関するロシアへの制裁措置に抵触するとしている。4月30日、連邦請求裁判所はULAに対し、RD-180エンジンの購入差し止め命令を出した。

ULA側の発表では、米国務省、財務省、商務省による調査で「NPOエネゴマシュはいかなる現在の制裁措置の対象にもならない、またULAがRD-180エンジンの購入を継続しても、直接的であれ間接的であれ、制裁に違反することにはならない」と明確に述べたとしている。

ULAは、発表文書で米政府系衛星打ち上げロケット「Atlas V」向けにロシアからのロケットエンジン購入は制裁措置に抵触しないとしている。さらに「スペースXの軽佻な訴訟が経営陣の注意を無駄に散漫にさせ、センシティブな国家的安全保障の危機のさなかにロシアに関する緊張を増大させた」と強く批判している。「利己的かつ無責任で、国際宇宙ステーションと協力国、ロシア側の参加者との協働プロジェクトを巻き込んだ脅威となる」とも述べている。

ロシアからのエンジン購入に関する点ではいったん結論が出たものの、スペースX提訴による米空軍とULAの契約に関する訴訟はまだ継続する。ULAは「スペースXが今回の件の根幹となる訴訟と、その件のメリットを再考するよう望んでいる」としている。

《秋山 文野》

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