台湾に残るサトウキビ鉄道[写真蔵]

鉄道 企業動向

鉄道は基本的に運賃を徴収して旅客や貨物を運ぶ輸送機関だが、自家用車のように自己の荷物を運ぶためだけに使用する特殊な鉄道も存在する。台湾に残るサトウキビ鉄道も、そうした鉄道の一つだ。

砂糖などの原料であるサトウキビは収穫後、近隣の製糖工場に運んで加工する必要がある。その運搬手段として用いられてきたのが、サトウキビ畑と製糖工場を結ぶサトウキビ鉄道。日本でも戦前、沖縄県内の各地にサトウキビ鉄道が整備され、戦後も南大東島に唯一残っていた。しかし、今から30年以上前の1983年、南大東島のサトウキビ鉄道は運転を終了。トラック輸送に取って代わられた。

沖縄のさらに南に位置する台湾も似たような状況だ。かつてはサトウキビ鉄道が網の目のように張り巡らされていたが、サトウキビの生産量が減少した上に輸送手段がトラックに変化したため、そのほとんどが廃止されてしまった。ただ、台北から南西へ約190kmの虎尾(フーウェイ)では、台湾唯一となった現役のサトウキビ鉄道が今も残っている。

虎尾は台湾西岸の中南部に位置する小都市で、人口は約7万人。市街中心部に製糖工場(台湾糖業虎尾糖廠)があり、ここから西へサトウキビ畑までサトウキビ輸送用の線路が延びている。2本のレール幅(軌間)は762mm。国際的な標準軌間とされる1435mmの半分程度の幅しかない。そのため貨車や機関車も小柄で、「五分車」などとも呼ばれている。

12月頃から翌年3月頃までの収穫期には、1日4~5往復のサトウキビ列車が運転されている。屋根が付いていない貨車を小さなディーゼル機関車がけん引して製糖工場を出発。西へ10~15km進んだところに設けられた、「装車場」と呼ばれる積み込みポイントで停車してサトウキビを貨車に載せ、製糖工場に戻るパターンを繰り返す。

虎尾糖廠のサトウキビ鉄道は毎年のように「今年限りで廃止」といううわさが流れているものの、収穫期が来ると必ず運転されている。「オオカミ少年」と化しているような気がしないでもないが、周辺は道路の整備が進んでおり、いつ廃止になってもおかしくない状況であることは確か。願わくば未来永劫(えいごう)、サトウキビを運び続けてもらいたいものだ。

虎尾は台北から西部幹線の自強号(日本の在来線特急列車に相当)で3時間10~20分の斗六(ドウリュウ)か斗南(ドウナン)で下車し、ここで虎尾方面に向かうバスに乗り換える。台北~虎尾間を直接結ぶバスも運転されている。2015年には虎尾の市街地北側に台湾高速鉄道の雲林(ユイリン)駅が開設される予定で、アクセスは格段に向上するはずだが、それまで虎尾のサトウキビ鉄道が残っているかどうか。
《草町義和》

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