【第6回宇宙エレベーター学会レポート】宇宙エレベーターってなに?…その基本をおさらい

宇宙 テクノロジー

2014年2月22日から23日まで、東京江東区・日本科学未来館にて第6回宇宙エレベーター学会 JpSECが開催された。宇宙への輸送コストを劇的に下げる宇宙エレベーターの実現から何が起きるのか。一般向け講演日の内容をレポートする。

宇宙エレベーター協会は、2008年に設立された宇宙エレベーターの実現を目指す民間活動団体。毎年夏には、地上で宇宙エレベーターの昇降機の技術を競技会形式で実証している。また、今回で第6回となる学会では、宇宙エレベーターの建造に関する研究や技術の発表が行われている。

2月23日の午前には、一般向けに宇宙エレベーターの概説、宇宙エレベーターが実現した後に利用できる用途について講演が行われた。午前の部最初の講演では、「宇宙エレベーターの物理学」の著者で東海大学理学部・佐藤実氏が宇宙エレベーター構想の歴史と活用について解説した。

宇宙エレベーターの構想の元は、旧ソ連の科学者コンスタンチン・ツィオルコフスキーの構想にある。さらにそれを同じく旧ソ連の技術者ユーリ・アルツターノフが具体的なアイディアにし、「電車で宇宙へ」のタイトルでプラウダ日曜版に一般向け読み物として掲載したところから始まった。日本はいち早くこの構想を翻訳・紹介しており、宇宙エレベーター(軌道エレベーターとも)の発想を取り入れた国である。とはいえ、静止軌道上で60ギガパスカルという強い引っ張り強度に耐えられる素材は当時はなく、1991年に飯島澄男博士がNEC基礎研究所で高強度素材カーボンナノチューブ(CNT)を発見するまで実現は不可能と思われていた。

CNT発見後、1999年にはNASAマーシャル飛行センターで宇宙エレベーターの実現性検討が行われ、翌2000年には元ロス・アラモス研究所のブラッスリー・C・エドワーズ博士がNASAの以来の元に宇宙エレベーターの基本的な実現性を検証した。長さ14万キロメートルのテザー(ケーブル)を使う初期のプランが作られた。宇宙エレベーター協会の活動は、基本的にはこの構想を元にしている。

宇宙エレベーターは、地上から宇宙へ人や物資を運ぶコストを大きく低減すると期待されている。現在、高度100キロメートル以上の宇宙へ物資を運ぶには、1グラムにつき1000円のコストがかかるといわれ、500ミリリットルのペットボトル1本の輸送費用に50万円かかる計算だ。宇宙エレベーターが実現すればこの費用は100分の1、5000円になる。一生の内に1回くらいはそういう「高い水」を飲む機会を得られるかもしれない。

また、宇宙エレベーターを使って、太陽系の他の惑星を探査する構想もある。ケーブルの途中、高度5万7000キロメートル地点を火星到達高度と呼び、ここから宇宙船を火星に向かう軌道に送りだすことができる。原理的には、推進剤なしで火星に到達することが可能だ。

宇宙エレベーターには、建造にあたって、また完成後もさまざまな課題があることは確かだ。長さ10万キロメートルを超える長大なケーブルが各種の外乱から振動する影響は、まだ完全には確かめられていない。また、質疑応答ではスペースデブリの脅威についても質問が寄せられた。高度1000キロメートルまでの低軌道までのものであれば、スペースデブリを地球に再突入させて処理することもできる。現状では、静止軌道上の衛星は再突入が難しいため、宇宙エレベーターにとっても脅威になる可能性があるとのことだ。
《秋山 文野》

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