ドイツの地球観測衛星TerraSAR-X 南極海で立ち往生したロシア船と中国船救出支援画像を公開

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12月30日に取得されたレーダー衛星画像による、ロシア船アカデミック・ショカリスキー(左下)と中国船 雪龍(右上)を囲む南極海の海氷。
  • 12月30日に取得されたレーダー衛星画像による、ロシア船アカデミック・ショカリスキー(左下)と中国船 雪龍(右上)を囲む南極海の海氷。
  • 海氷の周囲100×55キロメートルの拡大画像。画像右側の暗い部分は氷に覆われていない海の部分で、2隻の船から25キロメートルほど離れている。
  • 1月1日に取得された画像。アカデミック・ショカリスキーの西側(画像の左側)に広がる氷には、周囲に比べて暗い部分が見える。できてから1年経った氷が変形したものだという。

ドイツ宇宙機関DLRは、先月末から1月7日ごろまで南極海で海氷に閉じ込められていたロシアの調査船アカデミック・ショカリスキーと、同船を救助しようとして動けなくなっていた中国の砕氷船 雪龍、当時の周囲の状況を撮影した衛星レーダー画像を公開している。

ロシアの調査船アカデミック・ショカリスキーは、12月24日から南極海で海氷に囲まれて立ち往生しており、要請を受けて救助に向かった中国の砕氷船 雪龍も動けなくなっていた。オーストラリアやアメリカ沿岸警備隊の砕氷船が救助に向かい、ヘリコプターでアカデミック・ショカリスキーの乗客を救出後、2隻とも氷を脱した。

中国、オーストラリア、アメリカ、フランスの4カ国が協力してあたったロシア船の救出を、ドイツ宇宙機関DLRの合成開口レーダー衛星『TerraSAR-X(テラサーエックス)』が支援している。TerraSAR-Xは高度500キロメートルから幅30キロメートル、解像度3メートルの画像を提供できる。画像では表面のテクスチャとコントラストの違いから、海氷の中の船を識別することが可能だ。南極海の海氷は、強い風で刻々と変化し、数百メートルほどの範囲で状況が異なるため、高解像度で氷の状況を把握できる衛星画像が重要だという。

救出にあたり、DLR 地球観測センターは衛星からのレーダー画像を取得後1時間で処理し、オーストラリア海洋安全局の救助センターに送信した。取得された画像は、船の追跡や氷の厚さ、特徴の推定に利用された。例えば、ふたつの流氷が衝突すると峰を形成するため、衝突の痕跡がわかるという。砕氷船にとっても、氷の厚い部分を押し破ることは困難であるため、こうした情報が重要になる。

レーダー衛星画像では、2隻が海氷に閉じ込められたところから、開けた海まで25キロメートルあることがわかる。また、氷の一部にはできてから1年経った古い部分が見られるという。

《秋山 文野》

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