拡がる軽市場、走りの質で知るターゲットの棲み分け

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拡がる軽市場、走りの質で知るターゲットの棲み分け
  • 拡がる軽市場、走りの質で知るターゲットの棲み分け
  • ダイハツ タント(藤島知子氏)
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  • ダイハツ タント(藤島知子氏)
  • ダイハツ タント(藤島知子氏)
  • ダイハツ タント(藤島知子氏)
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クルマにとって、車内のスペースは広ければ広いほど便利で快適に使える感じがするが、クルマの体積が増えればスペースを覆う分の質量増加、ボディ強化にまつわる重量増、装備類の重たさが加速時の足かせとなる。

また、この手の軽は重心が高いのでカーブでふらつきを生じやすく、高速走行時の直進性も気になるところだ。ここでは、カタログだけでは分からない走行性能の違いに注目してみたいと思う。

現在の軽自動車はエンジンの排気量は660cc以下が義務づけられている。『N BOX』、『スペーシア』、『タント』の3車はどれも660ccの自然吸気エンジンと660ccターボエンジンの2種類を用意しているが、数値的には排気量が同じでも、ボディ構造の違いやエンジンとトランスミッションのマッチング、何を重視してクルマ作りを行っているかで走行特性は違ってくる。

◆タント、スペーシアの熟成された運転視界

まずは、スペーシアの運転席に乗り込んでみる。キャノピーみたいなガラスエリアは車内に明るい光を取り込み、ドライブ中に飛び込んで来る景色を楽しませてくれるものだ。

フロントウィンドウとサイドウィンドウの間には小窓が設けられていて、交差点の右左折時などに周囲の様子が確認しやすいように配慮されている。小窓で直接視界を広げる手法はタントやN BOXについても同様だが、ダッシュボードを高めにレイアウトしたN BOXは合わせ鏡の原理で死角を補っているものの、直感的な捉えやすさはスペーシアやタントが上だ。

◆フットワークの軽さはスペーシア

また、発進加速で最もフットワークが軽かったのはスペーシア。N BOXやタントと比べて100kg以上車重が軽く、エンジン負荷の少ない時に発電を行い、その電力をバッテリーに蓄えておけるエネチャージの恩恵で、アクセルペダルを踏み込んだときのエンジンパワーをパフォーマンス方向に使えるメリットがある。

前後のホイール間は最も短く、ボディもかなりしっかりした印象でカーブの走りも爽快に楽しめるが、燃費を意識して転がり抵抗を抑えるために空気圧を280kPaと高めに設定したタイヤが後席乗員に微細な上下動を伝えてしまうほか、ちょっと高めのノイズがフロア側から室内に入り込む傾向にある。

◆N BOXは、タント・スペーシアより大きいロール角が影響

車速が高まる高速道路では会話が途切れて話を聞き返す状況もありそうだ。一方で、N BOXのエンジンはアクセルを踏み込むと、回転を高めながら力を絞り出していくリズム感が『ホンダ車らしい』とニンマリさせる特徴がある。

N BOXは車重も背の高さも3車で最も大きいが、カーブではイメージよりもタイヤ一本分外側のラインを辿ることになる。スペーシアやタントと比べてロール角が大きいことで後席乗員の身体が左右に揺られやすい傾向にあるのだ。自然吸気のモデルは登坂でアクセルペダルを踏み込むとエンジン回転が高まりがちなので、カーブが多い山道を頻繁に走る人なら、軽快に走れるスペーシアかタントの方が適しているといえそうだ。

◆ダウンサイザーのニーズ吸収性が高いタント

ボディの左サイドの開口部が大きく、そのぶんボディを強化する必要があるタントは、しっかりした走りを実現させるためには他車より課題が多いはずだ。

その対策としては、軽量で高い剛性が得られる高張力鋼板を効果的に用いて強度を持たせることで、柱をもつボディの右側と同等の剛性を確保することに成功している。実のところ、走行時に最も意外性をみせたのがタントだった。

スペーシアと比べて、タントの自然吸気のモデルは、高速道路の合流で車速が上がるのをわずかに待つ場面もあったが、クルマの重さはしっとりした走りにつながり、走行中の耳障りなノイズも少ない。カーブでは想定外の揺れで身体が振すられるシーンが少なく、一定のリズムでハンドルを切り戻せる正確なハンドリングで、このクルマが軽であることを忘れさせた。

イメージ通りに走れることで運転に不慣れなドライバーに安心感を与えるほか、まるで上級車に乗っているかのような走りの気持ちよさまで与えてくれるのだ。快適性と静粛性、上級車からの乗り換えで走りの質は譲れないという場合は、タントに軍配が上がるだろう。

スペースユーティリティとファーストカーとしての資質が問われるスーパーハイトのモデルたち。それぞれ得意とする環境は異なるが、従来はこのクラスが苦手としてきた状況をプラスに転じる新しい発想が盛り込まれてきたことが分かる。税制面の議論も進み、軽と登録車の垣根が低くなりつつある時代だけに、軽といえども手を抜くわけにはいかないのだ。
《藤島知子》

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