日本航空(JAL)の心臓部である「オペレーションコントロールセンター(OCC)」で陣頭指揮を取るミッションディレクターは8人いるが、OCCのセンター長を兼ねているのが桑野洋一郎さんだ。前任はJALの福岡空港支店長だったという。
「ミッションディレクターはいろいろな経歴をもった人たちで構成されており、私のような空港支店長出身者もいれば、今もボーイング767を飛ばしている現役の機長もいる。整備出身の人も入るし、人事部のような事務畑の人もいる。本当にいろいろですが、各自の知見をもって運航管理に携わっています」と桑野さんは語る。
勤務時間は8時から17時と、15時30分から9時までの二交替制になっていて、これを8人で回している。運航に関しては社長から全権限を委譲されているミッションディレクターだが、必要なのは「決断力」だという。
「航空会社は飛行機を飛ばさないと利益が出ないわけですが、いざ欠航するとなるとその判断は少しでも早い方がいい。お客様が空港へ到着する前に欠航の情報が伝わっていれば代替手段の確保や旅行中止の判断が少しでも早くできるだろうし、なにより空港に来るという手間が省けます」、「ゆえに、時には“飛ばさない”という決断をスピーディに行うことが必要となります」。
直近でこの決断力が活かされたのは、9月16日に関東へ接近した台風18号のときだった。前日の段階で気象担当が「台風は関東を直撃するので、羽田は午前中いっぱいは確実に使えなくなる」と進言。これを受けたミッションディレクターは実に150便近い欠航を決めた。全日空(ANA)が前日段階で欠航を決めていたのは午前便で、その半分程度だった。
桑野さんは「さすがに150便を飛ばさないという決断には勇気が必要でした。ANAさんの数を聞いて驚きましたが、結果的には16日午後まで影響が残り、ANAさんも徐々に欠航便の数を増やしていったので、最終的にはほぼ匹敵する数になりましたね。天気にはどこの航空会社も勝てません」と笑う。
「飛行機を飛ばさない」と判断した場合、機材スケジュールの調整はもちろん、今回のような場合は「東京に戻ってこられない乗員の宿泊場所の確保」も同時に進めなくてはならず、ミッショディレクターが決断した瞬間から、OCCのスタッフは欠航の場合に必要な作業を迅速に進めていくことになるという。