【ITS世界会議13】移動情報のデータセントリックがもたらすビジネスの可能性

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左がエリック・マーク氏 IBMスマータートランスポーテーション グローバルディレクター 右がPaul Kompfner氏 ERTICO スマートモビリティ
  • 左がエリック・マーク氏 IBMスマータートランスポーテーション グローバルディレクター 右がPaul Kompfner氏 ERTICO スマートモビリティ
  • 前川誠氏 NECオートモーティブITS事業推進室ITS主幹
  • 武田一哉氏 名古屋大学教授
  • 武田一哉氏 名古屋大学教授
  • 武田一哉氏 名古屋大学教授
  • Paul Kompfner氏 ERTICO スマートモビリティ
  • Paul Kompfner氏 ERTICO スマートモビリティ
  • 上村昌博氏 経済産業省 情報セキュリティ政策室長

未来の交通社会では、渋滞や危険なスポットに関する情報が乗り物(vehicles)、ロードサイドセンサー、スマートフォンから集められる。 銀行や図書館のように最低限のコストで誰にでもこの情報が提供できるシステムを作ることは多く人々の助けになるはずである。

10月17日、ITS世界会議においておこなわれたセッションでは、 NECオートモーティブ・ITS事業推進室ITS主幹の前川誠氏をモデレータに「ITSにおけるデータセントリック」をテーマとした議論が行われた。NEC、名古屋大学、IBM、そしてエリクソンと、それぞれの立場から議論は非常に多岐に渡ったため、本稿では論者の意見を要約してレポートしたい。

◆データをいかにセキュアに抽出するかが鍵

前川氏はまず、交通情報、災害時の走行実績ログ、車両の故障診断、環境適合型交通支援、バッテリー管理などのクラウドサービスを列挙し、このうち実際に役立った例として、東日本大震災で走行実績ログから提供された「通過可能な道路を知らせる機能」を挙げた。

同氏は「車両が持つ情報は非常に価値のあるものだ。これらの情報が新しい社会的価値のある情報を創り出す。したがって我々は、乗り物がもつ情報を非常に安全に抽出するシステムを作ることが非常に重要となる」と主張した。

またさらには、今後の展望として、抽出したデータを物流、観光、ロードサイドサービス、公共交通機関、交通情報などとリンクすることで新たなサービスを実現できること述べた。

◆複雑化する個人の移動様式に、どのように対応するか

名古屋大学の武田一哉教授は、これからの車社会を考える上で考慮すべき点として、高齢社会における個人の移動能力の意味合いの変化を挙げ、移動すること自体の価値は下がるとを指摘する。

武田氏教授によると、移動することの価値は、「交通」「乗り物」そして「人」の三要素から構成されるという。

その三要素のうち、「人」、すなわち個人については、今後その行動様式やニーズがさらに複雑化することが予想されるため、そうした変化に対処するためのキーとなる技術がデータセントリックであると述べる。そして、そのデータセントリックを実現する上で重要なのは、どのようにデータを集め、共有するか、という点にあると主張した。

そのデータ収集と共有化については、武田教授は「正しいことの証明」「匿名化」「分析」「価格設定」という4つのプロセスがあると説明し、武田氏は、こうしたデータ運用のプラットフォーム構築を実現した具体例として、ERTICO社のPaul Kompfnerが開発したMobinetというプラットフォームを紹介。

Mobinetはオープンソースアプリであり、欧州に展開しているサービスである。特色は、このプラットフォームを通じてデータを共有化し、サードパーティのベンダーが交通の円滑化をサポートするサービスを提供可能としていることにある。これにより、新たな潜在顧客開拓への寄与が見込めるという。

◆潜在的なビジネス価値をもつ自動車分野のアプリケーションエリア

IBMのエリック・マーク氏は、次世代アプリケーションに重点をおき、ITSに関わる情報が、微細化・精緻化し、それぞれが相関する現状を指摘。さらにすべてのアプリケーションエリアのうち、55%は自動車関連のアプリケーションがしめることを指摘し、自動車がもたらすビッグデータデータの重要性を強調した。 

またさらにマーク氏は、データソースの革新についてのべ、ビデオ、統計、携帯追跡、センサー、小リレーション、ソーシャルメディア、など多様なデータソースが繋がると推測する。さらに、これまでの機能に加え、“sentiment(情操)”に関わるデータソースが生まれたことを強調した。IBMクライアントの知見集積より、自動車操作が関わる領域は、乗り物関連、予想可能な利点最適化、動的な消費者インサイト、そして安全対策と、データにより実証された最適化のいずれかに振り分けられるという。

◆コネクティングカーサービスのビジネス実現性

エリクソンのオリー・イサクソン(Olle Isaksson)氏は、通信事業者としての立場からコネクティングカーサービスのビジネス実現性について言及した。

車両との通信は、消費者との関係性、アフターケアマーケットの確保をその意義としてあげ、現状ではまだ閉鎖的であると指摘した上で、HSPAネットワークに基づく「CoCar」サービスを紹介した。同サービスは車同士のコミュニケーションにより危険時の警報や、交通情報提供の通信に特色があるという。

《北原 梨津子》

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