【スマートモビリティアジア13】「カーナビ・テレマティクスはCRMツールに」神尾寿氏

自動車 ビジネス 国内マーケット
神尾寿氏の講演(スマートモビリティアジア13)
  • 神尾寿氏の講演(スマートモビリティアジア13)
  • 神尾寿氏の講演(スマートモビリティアジア13)
  • 神尾寿氏の講演(スマートモビリティアジア13)
  • 神尾寿氏の講演(スマートモビリティアジア13)
  • 神尾寿氏の講演(スマートモビリティアジア13)

スマートモビリティアジア13で、ジャーナリストの神尾寿氏による講演が行われた。

クルマに関しては3つの“スマート”に分類して解説を行った。

これからのクルマは所有欲を満たすモノではなくなる

1つめはスマートフォン。バルセロナで開催された通信デバイス展「MWC」や、ラスベガスで開催された家電見本市「CES」では、自動車メーカーの出展が相次いだことを振り返り、自動車と通信関連、スマートフォンとの今後に注目が集まり、伸びしろのある分野であるとした。こうした背景から「スマートデバイスは2、3年後に8割方のユーザーが対応していると断言できる」(神尾氏)とし、先を見越した事業展開を図る必要があると説いた。

2つめのスマートは、スマートドライブ。安全走行を行うためのデバイス、システムである。スバルの運転支援システム「アイサイト」を具体例にし、なぜアイサイトが成功したかを分析。そのポイントはステレオカメラにあるとし、近年のカメラデバイスのコスト低下、性能向上に後押しされたとみている。

また、売り方もポイントとし、事故後にバンパー交換をするか、事故を起こさないようにアイサイトをつけるか、仮に支払いがいずれも10万円ならどちらにするか、という考え方を紹介。「アイサイトは、事故をして直すくらいなら事故を起こしたくないという意識を喚起することに成功した」と話した。

3つめはスマートモビリティ。持続可能な成長のためには環境問題対策、エネルギー対策が欠かせない。動力、エネルギー源、交通手段それぞれの「多様化」をバランスすることが持続可能な成長につながるとした。とくに交通手段の多様化の部分で「自動車はこれまで所有の欲を満たすところで産業が発達してきましたが、今後はクルマの所有ではなく、利用という観点をもつことが重要」と述べた。

テレマティクス市場は日本で作られている

日本で最初のテレマティクスはVICS。1996年に登場で、当初はVICS使用料がユーザーに課金されていた。テレマティクスはカーナビと密接に関係することとなった。

神尾氏は2001~2010年をつぎの世代とした。オンデマンドVICS、プローブカーの登場などが起こった期間、カーナビはナビゲーションに加え、それ以外の機能拡張を進めた。

神尾氏によると、2010年以降は、テレマティクスサービスが無料で投入される時代になったと分析。

なぜ無料になったかについて神尾氏は、ホンダリンクアップフリーを例に解説。「ディーラーへの入庫誘導に活用する、すなわちCRM(顧客関係管理)。この囲い込みにテレマティクスを用いることで(無料化を)達成した」とし、無料ビジネスモデルの裏側について話した。アフターサービス面でお金が落ちる仕組みができれば、テレマティクスは無料にできるとした。

テレマティクス(主に通信の)無料モデルと引き換えに「次の車検の時にホンダディーラーで車検を受ける」約束をする。これを「CRM型テレマティクス」とした。

テレマの無料化とアフター囲い込みは今後のトレンド

神尾氏は、中長期のトレンドとして、「クルマのダウンサイジングとスマホナビの台頭」、「カーナビ・テレマティクスのCRMツール化」を掲げた。

また、主に自動車業界のビジネスに携わる参加者に向け神尾氏は「時計の針は戻らない、時代は逆行しない。断言します」と強調。「ITが関わってから、そうした傾向は強い。古いビジネスモデルは廃れる、なくなる、死んで行きます。であれば、自分たちが時計の針を進めることです。これはITの世界では当たり前で、鉄則です」。

「自分たちが時計の針を進めるんだ、いままでの世界には留まれない、留まらないんだという考え方です」とし、ノキアやHTCを例に出し、今後のビジネスに対する危機感と可能性を示唆した。

《土屋篤司》

【注目の記事】[PR]

編集部おすすめのニュース

特集