【JAL 地上でも働くパイロットたち】フライトシミュレーターでの訓練も地上勤務扱い

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ボーイング737-800のフライトシミュレーター。壁には「B787」の記載があるので、近々入れ替わるのかもしれない。
  • ボーイング737-800のフライトシミュレーター。壁には「B787」の記載があるので、近々入れ替わるのかもしれない。
  • フライトシミュレーターの内部。当然ではあるが、ボーイング737-800の操縦席とまったく同じ構造となっている。
  • 最初に披露されたのは、離陸手順。羽田空港のC滑走路(34R)からの離陸となった。
  • 見学者(取材者)の人数が多く、実際と同様の挙動(モーション)は停止されていたが、あまりにもリアルで傾いているような錯覚を受けた。
  • こちらは実際の訓練に使われていたモーション作動中のボーイング787のシミュレーター。
  • 東京スカイツリーなど、飛行ルートに影響がある高い構造物についてはシミュレーターの中でも再現されている。
  • 東京スカイツリーを数周し、羽田に戻ってきた。
  • 「このシミュレーターで再現できる一番シビアな条件は?」というリクエストで、ほとんど視界がない状態での着陸もやってもらった。計器だけが頼りとなる。

パイロットのデスクワークというのは多岐に及んでいるが、飛行機の操縦に直結しているものもある。それがフライトシミュレーターを使った訓練だ。実機と同様の操縦席で訓練を行うものだが、実際のフライトではないこともあり、地上勤務に含まれるという。

日本航空(JAL)では羽田空港内の施設に9台のフライトシミュレーターを有している。実際のフライトでも運用数の多いボーイング737-800が最も多い3台で、ボーイング777と767がそれぞれ2台ずつ。最新鋭のボーイング787は1台あり、さらにボーイング737-400が1台。これらが午前7時から午後11時まで休みなく稼動している。

「フライトシミュレーターの数は限られているので、訓練教官ではない一般のパイロットが使用するのは年に4回です。シミュレーターを使った訓練の内容も定められていて、自由に使うことはできません」と説明するのは、ボーイング787の機長であり、運航訓練部787訓練室で訓練教官も務める松野伸一郎さんだ。

シミュレーターを使って行う訓練は「実機では行えない、実機では体験しがたいメニュー」が中心で、例えばシビアな天候下での離着陸であったり、火災や気圧抜けなどの緊急対応が主となっており、実際に発生したトラブルを訓練内容に反映している。

シミュレーターを使った訓練の中で特徴的なものがLOFT(Line Oriented Flight Training)。これはフライト時間(東京~大阪の場合、羽田空港の駐機場を出て、関西や伊丹のスポットに入るまでの約1時間30分)を実尺で訓練するもので、緊急事態発生時の対応であるとか、トラブル解消までのプロセスが訓練や審査の対象となる。シミュレーター内にはビデオカメラが設置されており、事後に手順が適切だったかどうかを検討することになる。

初対面同士のパイロットがコンビを組むことが大半となるが、緊急時における基本的な対応であるとか、言語技術教育を通して身につけたコミュニケーション手段をJALのパイロット全員が有しており、大きな問題が起きることはないという。今回の取材ではフライトシミュレーターでの訓練も公開されたが、初対面同士のパイロットたちが淡々とトラブルに対処していく様子は頼もしく感じた。

「フライトシミュレーターは数も限られているし、稼動させるには相当のコストも掛かる(松野さん)」ということで、初期訓練中のパイロットに対しては「紙レーター」と呼ばれるものも使われている。

これは操縦席をほぼ実寸で再現したモックアップで、操縦席の機器配置を覚えるのに使ったり、操縦時の操作手順を教える目的で使われている。これも機種ごとに数台があり、フライトシミュレーター同様に昼夜を問わず用いられている。

《石田真一》

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