U-Car(中古車)を購入する際にもっとも気になるのは、車の状態だ。U-Carを商品として蘇らせる工場では、洗浄や車両点検などを実施しているが、ハイブリッドカー向けの点検整備はどのようにおこなっているのか。
ハイブリッドカーの新車販売実績が豊富にあるトヨタとホンダを取材し、展示前整備の現場をレポートする。
◆年間1万台を“生産”するU-Car工場…トヨタメトロジック 相模原センター
まず取材したのはトヨタメトロジックの相模原センター。ここは東京トヨペットなどが下取りした車を受け入れて、U-Carの商品化をライン化した、納車整備の工場だ。『まるごとクリーニング』と呼ばれる内装・外装クリーニング用のラインで、年間1万台のU-Car生産能力を実現したという。
まず販売店から来た車は、最初にアルミホイールのガリ傷補修から始まる。ボディに傷やへこみなどがあれば、ここからBP(板金塗装)へ。もともと程度の悪い車は入って来ず軽作業が中心だが、マスキング、パテ塗り、塗装など、各工程ごとに専任の作業員いて、流れ作業のように取り組んでいる。この方が効率が良いのだ。
BP工程を終え、完成検査を受けてOKが出ると、まるごとクリーニングへ移る。ラインは3本。1工程45分で、4工程に分かれる。最初の2工程は室内。注目されるのは、フロントシートを外してしっかりと洗浄していることだ。まず洗剤の入った水を霧状にシートに当てて汚れを浮き出した後、水で洗い流しながらそれをまた吸い上げる『リンス洗浄機』で仕上げていく。洗浄後の排水を見せてもらうと、真っ黒。一見してきれいに見えたシートだが、こんなに汚れていたのだ。優れもののマシンである。
次にシート以外の天井、インパネ、トランクなども、専用のリンス洗浄機を使ってしっかりとクリーニング。匂いが染みついているフロアカーペットは特に念入りに洗浄されている。また、除菌・消臭も施す。前ユーザーの使用感をまるでなくしてしまおうというのだ。
後半の2工程は外装関係。ボディの洗浄、みがきから、ボディコートまで至る。エンジンルームも洗浄して艶出しまで行っている。ここまでとてもスムーズ。作業標準要領書があって各工程ごとに細かくパソコンで管理しており、さながら新車の生産工場のようでもある。15分に1台の割合で仕上がっていくという。
ラインで完成してピカピカになった車は、一度メトロジック側で汚れが残っていないかなどを検査する。ここでOKがでたら次のヤードに移動して、今度はトヨタ認定検査員がさらに厳しくチェック。ここで晴れて合格すると車両検査証明書が発行されるのだ。
ハイブリッド車の場合は、パソコンと車をケーブルでつなぎ、ハイブリッドシステムが完全に作動しているかなどを綿密にチェック。バッテリーの冷却ファンの作業点検も併せて行っている。これはトヨタ販売店にしかできない強みだ。そしてここでハイブリッドシステム診断書も発行。安心して店頭に並べられる車へとなったわけである。
トヨタメトロジックの相川和久センター長は「再生工場の品質として日本一だと自負している」と言う。効率的でかつ念入り。いかにもトヨタらしいU-Carの仕上がり具合であった。
◆抗菌・消臭加工を全車に…ホンダユーテック・オートテラス城北
ホンダオートオークションの運営や四輪中古車販売をおこなうホンダユーテックが運営する中古車専業店舗がオートテラス城北。6月にリニューアルオープンしたばかりの真新しい店舗で、バリアフリーを徹底した敷地に、クリーンでモダンかつ商談スペースが充実したショールームが特徴だ。キッズルームやフリードリンクのブースも用意され、中古車店であることを忘れるようだ。
この店舗では、9つのピットと1つの検査ラインを持つ整備工場が併設されている。250台の在庫と10のストールという、ホンダディーラーが運営する中古車販売店(オートテラス)としては全国でも屈指の規模だ。
所長代理の前野浩二氏によると、「中古車商品化に際しては、ホンダオートテラス全体の取り組みとして、全てのU-Carについて専門スタッフによる29項目の基本点検整備基準に準じた点検・整備を実施している」と説明する。
また、オートテラス城北でも車内クリーニングには力を入れており、工場長の高木堅仁氏は「展示前の商品化作業として、光触媒消臭加工による消臭・抗菌加工が全車に施工している。たばこ等、車内に染みつきやすいニオイの元まで脱臭できる」と語る。消臭効果は6カ月程度持続するそうだ。
ピットやバックヤードでは商品化作業がおこなわれていた。『NSX』や『S2000』といった本格スポーツカーから軽自動車まで非常に幅広い車種の整備をうけもっているという。
高木氏は「オートテラス城北で在庫するU-Carのうち、およそ3割がハイブリッド。ハイブリッドカーは制御システムが非常に高度でコンピューターが走っているようなもの。商品化前の点検に際しては、バッテリーを中心にとくにシビアに見るようにしている。また、下回りチェックも念入りにおこない、メインケーブル類やハーネスに損傷がないかも見ている」と述べ、商品化前の点検でハイブリッドのトラブルを未然に防ぐチェックを徹底しているという。
《嶽宮三郎》