【キャデラック ATS 試乗】らしからぬ硬めの足とダイレクトなハンドリング…松下宏

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キャデラックATS
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キャデラックの新型車『ATS』は、プレミアムブランドのボリュームゾーンに向けて新たに参入を図ったモデルだ。『Cクラス』や『3シリーズ』をターゲットに、いろいろな意味で従来のイメージを一掃し、新しいエントリーモデルを作った。

ATSはBMW『3シリーズ』を強く意識して作られた。ボディサイズが4680mm×1805mm×1415mmというのは3シリーズとほぼ同じ大きさだし、1580kgのボディの前後重量配分が790kg:790kgと完全に均等とされているのもBMWを意識している。

惜しいのは1805mmという全幅だ。日本では立体式の駐車場などに1800mmが基準とされているものが多くあり、ATSはそうした駐車場に置くことができない。

全体的にワイド&ローのバランスの取れたプロポーションを持つATSだが、空間設計はやや厳しい。比較的コンパクトなサイズのFR車でフロントミッドシップにエンジンを搭載するので、後席の居住空間に余裕はない。リヤドアの開口部が小さいので、後席への乗降性も良くない。

搭載エンジンは直列4気筒2.0リッターのインタークーラー付きターボ仕様。キャデラックに4気筒とか2.0リッターというのはちょっとした驚きながら、今の時代、キャデラックもダウンサイジングターボという御時世なのだ。

動力性能は203kW/353Nmと相当に強力で、BMW「328i」を上回る性能を持つ。必ずしもクラス最強ではないが、十分に強力なエンジンであり、動力性能の数字だけでなくエンジンのフィールもとても気持ちが良い。

ターボラグなどを感じさせることなくアクセルワークに応じて滑らかに吹き上がり、回転の上昇に合わせてパワーが盛り上がる。パワフルなエンジンであると同時に、回す意味のあるエンジンで、比較的軽めに作られたボディを楽々と引っ張っていく。

電子制御6速ATは、6速という数字に物足りなさを感じるが、実際にはATは6速もあれば十分で、この6速ATの変速フィールにも不満はない。

スポーツモードを選択して走れば減速時に空吹かしを入れてシフトダウンするなど、それなりの味付けもしてある。強いていえば、ラグジュアリーにはパドルの設定がない(プレミアムにはある)ことが物足りない点だ。

アクセルを踏み込むと重低音が室内に入ってきて気分を高揚させ、逆に時速100kmでの高速巡航時にはエンジンの回転数が1700回転程度に抑えられて静かなクルージングとなる。この静粛性にはBOSEのノイズキャンセリング・システムも貢献している。

シャシーもきびきびした感じの性能を備えていて、全くキャデラックらしくない。かつてのキャデラックは、ゆったりした足回りに操舵(そうだ)感覚の薄いパワーステアリングの組み合わせというイメージだったが、ATSはそんなキャデラックのイメージを一掃するクルマだった。

かなり硬めのしっかりした乗り味を感じさせる足回りは、標準サスペンションを採用したラグジュアリーが相当に硬めの印象で、マグネティックライドを採用した上級グレードのプレミアムはモードの変更も可能ながら、基本的な硬さは共通している。

サスペンション以上にスポーティに感じたのはステアリングで、軽く舵(かじ)を切るとすっと向きを変えるようなダイレクトさを持つ。このステアリングフィールは、これまでのキャデラックのものではない。むしろ敏感に反応しすぎと思えるくらいだ。

足回りについてはBMWを意識しすぎてキャデラックらしさがスポイルされているような印象を受けた。

ATSには、最新の安全装備がいろいろと盛り込まれている。最近話題のオート・コリジョン・プレパレーション(衝突事前対応ブレーキ)を始め、アダプティブ・クルーズ・コントロール、サイド・ブラインドゾーン・アラート、レーン・デパーチャー・ウォーニングなどがそれだ。

スポーティな走りの味や充実した安全・快適装備を備えながら、ATSには比較的割安な価格が設定されている。ただ、左ハンドル車しか設定がないので日本では勧められないクルマである。右ハンドル車があったら、けっこう売れたのではないかと思わせるだけに残念だ。

■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★

松下宏|自動車評論家
1951年群馬県前橋市生まれ。自動車業界誌記者、クルマ雑誌編集者を経てフリーランサーに。税金、保険、諸費用など、クルマとお金に関係する経済的な話に強いことで知られる。ほぼ毎日、ネット上に日記を執筆中。
《松下宏》

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