【タイトヨタ G-BOOK 現地レポ】ディーラーマネージャー「e-CRBを新型 ヴィオス のマーケティングに活用」

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トヨタ スワンナプーム店 マネージング・ディレクター、Sakda Pornprinya氏
  • トヨタ スワンナプーム店 マネージング・ディレクター、Sakda Pornprinya氏
  • smart G-BOOK対応ディスプレイオーディオ(試作機)
  • タイトヨタオフィス
  • ディーラーで来店客にタイしてsmart G-BOOKをどのように訴求するかを説明するスタッフ
  • コールセンターの眼下にはサービスのストールが見える
  • タイトヨタディーラー内のコールセンター

タイのバンコク郊外、国際空港のほど近くにあるタイトヨタ スワンナプーム(Suvarnabhumi)店がある。今回、この店を訪れ、ディーラーでのe-CRBやsmart G-BOOKの活用事例を取材した。

スワンナプーム店は、タイトヨタ(TMT)の支援の元、e-CRB中古車やスマートG-BOOKなど最新のディーラーオペレーションシステムをいち早く導入し、運用してきたモデルディーラーだ。

同店のマネージング・ディレクター、Sakda Pornprinya氏は、父がバンコク郊外で経営していた自動車販売店に就職し、整備から販売までディーラーに関わるあらゆる業務を経験してきた。その自動車販売の長い経験から得たのは、「自動車ビジネスはサービス業」ということだ。

◆「自動車ビジネスはサービス業」

----:タイでのディーラー運営において、e-CRBをどのように位置づけているか。

Pornprinya:自動車ディーラーは“モノ売り”ではなく、つまり売って終わりではなくて、お客様にサービスをすることで収益が増えていくビジネス。販売だけでなく入庫サービスを強化するために、タイトヨタ(TMT)とのe-CRBプロジェクトを通じてお客様との関係構築に努めている。当社とTMTの考え方は一致しているので、考え方や仕組みも十分理解したうえで、現場でオペレーションできている。

日本のメーカーに限って言えば、クルマの性能や装備はメーカーが異なっても大きな差はない。少なくとも、お客様にはそう見える。となると、ディーラーを選ぶ条件は商品ではなくなる。いかに入庫サービスを向上して、継続的にディーラーに来ていただき、次の購入につなげるか。このサイクルを回すためにe-CRBの存在は重要だ。

----:e-CRBを活用するに当たって現場で心がけているのはどのようなことか。

Pornprinya:i-CROPもSMB(Servics Management Board:入庫作業を見える化するための電子ボードに)もsmart G-BOOKも、個々のツールを導入するだけでは、目新しさばかりで時間が経つと使われなくなる。ひとつのツールだけではサイクルを完結させることができなくて、全部をやってはじめて理想の販売になる。i-CROPで得た電話番号は直接新車販売につながっていくが、たとえばコールインいただいた際にお客様の名前もすぐ分かり、呼ぶことができる。こうするとお客様も感動してくれる。これらの先端ツールを導入することは重い投資と感じるが、帰ってくる結果も良い。投資に見合ったリターンがある。

----:この春、smart G-BOOKがリニューアルした。手応えは。

Pornprinya:新しいsmart G-BOOKが販売に貢献するか、そしてお客様の満足度を上げられるかというのは、正直私でも分からない。ただ使ってみて分かるのは、行きたい場所をオペレーターに告げるだけで目的地を設定できるというのは非常に便利だということ。また、タイにとって非常に新しいサービスであることも重要だ。タイの多くの人びとはスマートフォンを利用しているので、このような新しいサービスはブランドの先進イメージを引き上げるのに効果がある。

◆ヴィオスは期待の新型車、エコカー対策も急務

----:先のバンコクモーターショーで新型『ヴィオス』が発表された。最量販車であるこのモデルの全面改良に対する期待は。

Pornprinya:ヴィオスは既納のお客様も数多く、新規・代替需要を鑑みても非常に大切な商品だ。モーターショーで発表された新型ヴィオスは、スタイリングやクルマ自身のパフォーマンスなどお客様の受けはいいので非常に期待をしている。ただ、今回のタイミングでは、去年の需要政府のファーストカーインセンティブ(※)に間に合わせられなかった。この点が残念でならない。(※初めて自動車を買うユーザーに対してタイ政府が補助金を出す施策)

----:タイの乗用車はエコカーカテゴリーの税制優遇(※)で勢いづいているが、トヨタの取り組みをどう見るか。(※排気量1.3リットル(ガソリン)/1.4リットル(ディーゼル)以下で、Euro4水準の排ガス規制に対応、燃費20.0kmリットル以上を対象とした優遇税制制度)

Pornprinya:競争が激化している中で、特に今年の自動車のマーケット、2013年の第一四半期は非常に大変な期間だった。エコカーについては、全体のシェアの20%まで来ている。この20%から増えるかどうか分からないが、トヨタがこのエコカー分野への新商品投入が遅れたことで販売機会を失っている。いまは、バイクからクルマに切り替える層、つまり新規のお客様が非常に多いので、この人びとをしっかりグリップしなければならない。

----:具体的にどのようなマーケティング施策をおこなっているのか。

Pornprinya:トヨタ車の保有客に対して新型ヴィオス周知させて買い換えにつなげたい。この8年間で積み上げたe-CRBの顧客に対して、i-CROPのデータを参照して、特定のトヨタ車を持っているが過去1年間入庫がないお客様や、10万人のトヨタ車を乗っている4年以上乗っていらっしゃるお客様にたいして携帯電話のSMSから誘致する。オプションの割引件や点検整備の費用補助をインセンティブに、来店していただくための“ウェルカムホーム”というキャンペーンを検討中だ。

◆後日譚…SMSは不発もコールセンター施策で挽回

なお、このインタビューから1ヶ月あまり後、5月初旬に広州で開かれたTSL研究会で、Sakda氏が語っていたヴィオスの販促キャンペーンについての結果が明らかになった。

このキャンペーンでは25万の旧型ヴィオス、『ヤリス』および『アヴァンザ』のオーナーのうち、ディーラー入庫のある15万人と入庫のない10万人とに分け、それぞれ別のタイミングで携帯電話へのSMSによる新型ヴィオスの告知をおこなった。

しかし、タイトヨタが想定していたよりも反応は鈍かった。というも、多くの顧客はSMSによる広告を読まずに即座に削除していたからだ。特にアクティブ客の反応が良くなかったのはタイトヨタとしても想定外だったようだ。

そこで、タイトヨタではコールセンターの機能を用いて6000バーツのサービスチケットをつけて点検入庫の誘致を実施。すると急激に反応が増え、4月の終わりまでにはおよそ1万4000の見込み客の獲得ができたという。e-CRBで蓄積してきた顧客情報を活用し、状況に応じた柔軟な施策により、サービスチケットという形で顧客に還元するだけでなく、見込み客も同時に獲得できたマーケティング施策の好例と言えるだろう。

《まとめ・構成 北島友和》

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