【池原照雄の単眼複眼】今期はピークの8割強に回復…乗用車8社営業利益

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乗用車8社の連結営業利益予想とピーク回復率
  • 乗用車8社の連結営業利益予想とピーク回復率
  • トヨタ自動車2013年3月期決算会見
  • 日産自動車 カルロス・ゴーン社長

13年3月期はダイハツ、富士重工が最高益に

乗用車メーカー8社の今期(2014年3月期)業績は、超円高の急ピッチな是正によって順調な回復が確実となってきた。連結営業利益で見ると、08年秋のリーマン・ショック以前の各社のピークに対し、今期は3社がそれを超えて最高益となる。8社合計ではピークに対し82%の回復率となる。だが、前提レートが慎重に設定されているため、足元の為替水準が続けば8社ベースでも最高益更新となりそうだ。

乗用車8社の前期(13年3月期)決算は、北米や東南アジアでの販売好調に加え、政権交代を受けた第4四半期に円高の是正という「フォローウインド」(豊田章男トヨタ自動車社長)を受けることができた。日中関係の悪化による中国での販売減などの影響により、日産自動車は4%の営業減益となったものの、7社は大幅な増益となり、前々期まで唯一赤字だったマツダは黒字転換した。

軽自動車の好調で過去最高を更新中のダイハツ工業が3期連続の最高益となったほか、主力の米国を中心に販売を伸ばす富士重工業(スバル)も実に13年ぶりに最高益を更新した。前期の8社合計の営業利益は約2兆9100億円となり、各社のピーク時合算値の62%まで回復した。

トヨタ、2兆円超えで最高益更新も

今期の各社連結営業利益予想では、ダイハツが小幅増益ながら4期連続の最高益更新見込みとした。また富士重工は2期連続、さらにスズキは08年3月期以来6期ぶりに最高益となる。ダイハツと富士重工はリーマン・ショック以前のピークに対し、今期はともに2倍程度の利益確保をめざす。

乗用車8社の連結営業利益予想とピーク回復率(★は過去最高益)
企業名…今期営業利益予想(回復率)…対ドルレート
トヨタ… 1兆8000億円(79%)…90円
ホンダ…7800億円(82%)…95円
日産…6100億円(80%)…95円
富士重工…★1800億円(2.0倍)…90円
スズキ…★1500億円(100%)…90円
ダイハツ…★1350億円(2.1倍)…93円
マツダ…1200億円(74%)…90円
三菱自工…1000億円(92%)…95円
(合計)3兆8750億円(82%)

ダイハツなど3社の最高益組を除く5社は、ピーク時に達しないものの、おおむね80%前後まで戻す予想としている。8社の合計営業利益は3兆8750億円となり、各社のピーク時合算値(4兆7000億円)に対し82%の回復率となる。

8社が業績予想の前提とした円・米ドルレートは表に示すように、1ドル90円から95円となっている。先週5月10日には円高修正のひとつの壁であった同100円を超える水準に入っており、いずれも想定レートは保守的だ。現時点では8社合計で今期の為替変動による営業増益効果は約1兆0600億円だが、足元の為替水準が続くと大きく上ぶれる。

ドルに対する今期の為替感応度は、トヨタが1円の変動につき400億円を見込んでいる。輸出増加見込みなどを勘案して、前期の350億円から見直したのだ。トヨタの場合、前提レートである1ドル90円が、現在の水準である同100円になると、対米ドルだけで4000億円の増益に作用する。トヨタの営業利益の最高はリーマン・ショック直前の08年3月期の2兆2703億円。足元の為替レートはすでに最高益更新のポジションにつけている。

《池原照雄》

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