BMW傘下のMINIは意欲的にバリエーションの拡充を進めている。『クラブマン』は2007年10月に2代目MINIに設定されたボディタイプで、その後2009年6月にJCW(ジョン・クーパー・ワークス)を追加し、2012年10月にはJCWにAT車が追加された。このクラブマンの6速AT車に試乗した。
クラブマンJCWの試乗は、袖ヶ浦フォレストレースウェイのサーキットをベースに開催され、サーキットコースや一般道、館山自動車道などを走った。
搭載エンジンはパワフルそのものといった感じ。直列4気筒1.6リッターの直噴ターボ仕様で155kW/260N・mのパワー&トルクを発生する。1260kgの重量に対してこの動力性能だから、余裕の走りも当然といった感じである。
それも単に動力性能に優れるだけでなく、エンジンの吹き上がりの良さがすごい。アクセルを踏み込むと一気に吹き上がり、気持ち良く回転が上昇していくのに合わせてパワーが盛り上がっていく。その加速は俊敏というよりも豪快なものだ。
足回りの硬さは標準モデルのクーパーからJCWまでの各モデルに共通するが、JCWの足は特に硬い。スポーティな走りを楽しむときには良いが、日常的な使い勝手を考えるとちょっと硬すぎる印象でもある。足回りの硬さについては、BMWにおけるMスポーツを思わせるようなところがある。
クラブマンのボディは右側に2枚のドア、左側に1枚ドアという独特のものだ。この使い勝手はほかにはないものながら、本国では左ハンドル車のこの設定がなされている。日本向けの右ハンドル車は、ドアはそのままにハンドルだけが右側に移された形だ。
なので、後席に乗り降りするときには右側の後ろのドアを使うので、乗降性がさほど良くならない面がある。逆にドライバーが手荷物などを置くには便利である。このほか後部に観音開きドアを持つのも特徴で、荷物の積載性には優れている。
クラブマンJCWの価格は417万円で、動力性能の高さに合わせて高めの価格が設定されている。ベースグレードのクーパーなら280万円弱の設定だから差は大きい。
MINIは販売時に値引きがほとんどないことを含め、決して安い買い物ではない。でも逆にリセールバリューの高さが特徴で、外国車の中でも群を抜いている。代替も含めてトータルで買い得感を考えるべきクルマだろう。
■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★
松下宏|自動車評論家
1951年群馬県前橋市生まれ。自動車業界誌記者、クルマ雑誌編集者を経てフリーランサーに。税金、保険、諸費用など、クルマとお金に関係する経済的な話に強いことで知られる。ほぼ毎日、ネット上に日記を執筆中。