【池原照雄の単眼複眼】300万台市場に成長した“ASEAN3”

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タイトヨタバンポー工場組立ライン
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いずれも最高を更新したタイなど3か国の内需

東南アジアの新車需要が2012年に大きく拡大し、世界のなかでも高い成長ポテンシャルをもつ「新・新興市場」として台頭してきた。トヨタ自動車など日本メーカーの多くは12年にグローバル販売で過去最高を更新したが、日本車が高いシェアを保持するASEAN市場の貢献が大きかった。13年は最大市場のタイで反動減が見込まれるものの、上位3か国で300万台程度のスケールは維持できそうだ。

12年のASEANの新車市場はタイ、インドネシア、マレーシアの主要3か国でいずれも過去最高を更新した。タイの洪水の影響が周辺国にも波及した11年から生産、販売ともに急速な回復力を見せた。部品産業を含む日本企業の復興への頑張りが原動力となった。

市場活性化のために、初めて新車を購入するユーザーへの減税措置を12年末の受注分まで実施したタイの12年の内需は、前年比81%増の143万6000台と、従来の最高記録だった80万台(10年)を大きく塗り替えた。

地域で自立が可能な市場規模がある

インドネシアでは6月からローン規制が強化され、冷える要因と懸念されたものの25%増の111万6000台と、こちらも高い成長を見せた。タイとともに、両国の100万台超えは初めてだ。一方で3か国のなかでは需要が成熟期に入りつつあるマレーシアは5%増の62万8000台だった。

3か国合計では39%増の318万台に達した。赤道を挟んで南北に隣接するこの“ASEAN3”の市場が300万台に成長した。3つの国が束になった数字ではあるが、300万台超はブラジル、ドイツ、インドと肩を並べる水準。それは、国や地域単位として自動車産業の自立的な立地が可能な市場規模でもあるのだ。

円高修正とともに業績改善のバックボーンに

日本の自動車メーカーはASEANで中核的な生産拠点となっているタイを中心に主要部品や車両の相互補完を行い、この地域で完結できる生産態勢を目指してきた。それには一定の内需が不可欠だった。タイの12年の生産は68%増の245万となり、ざっと100万台を日本など成熟国を含む世界の国々に輸出する力を蓄えた。

もっとも13年のASEAN3の内需は、昨年の急激な市場拡大の反動もあって鈍化しそうだ。トヨタは今年のタイの市場を16%減少の120万台規模と見込んでいる。ただし、それでも3か国合計では300万台規模をキープすることになろう。

日中関係の不透明さから日本各社にとっては、世界最大市場での苦戦が続く2013年となる。だが、円高の修正に加え、主要3か国で300万台マーケットに成長した東南アジアのオペレーションが今年の業績改善への大きなバックボーンとなるのは確実だ。

《池原照雄》

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