【インタビュー】「月と少年」ピクサー エンリコ・カサローザ監督

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「月と少年」:エンリコ・カサローザ監督
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「月と少年」(「メリダとおそろしの森」同時公開)のエンリコ・カサローザ監督インタビュー 前編
日本アニメも大好き アカデミー賞ノミネート監督が語る短編アニメーション

ディズニーピクサーの最新作『メリダとおそろしの森』が7月21日に全国公開となり、多くのファンから人気を博している。森と魔法というファンタジックな舞台を背景に、王女メリダの成長と母と娘のつながりを描く感動の作品だ。

その映画と併せて、さらに見逃せないふたつの短編アニメーションが同時上映されている。『月と少年』、それに『ニセものバズがやって来た』である。
『月と少年』は、2012年の米国アカデミー賞短編アニメーション部門にノミネートされた傑作だ。子と父と祖父、3世代にわたる一族が、月夜に不思議な仕事と経験をする。宝石のようなチャーミングな物語である。

本作の監督は、ピクサーのストーリー・アーティストとして活躍し、『カーズ』や『カールじいさんの空飛ぶ家』などに参加、活躍するエンリコ・カサローザさんだ。監督初挑戦で、アカデミー賞短編アニメーション賞にノミネートで俄然注目を浴びている。
またカサローザ監督は、宮崎駿作品の大ファン、日本アニメからも大きな影響を受けたと話す。エンリコ・カサローザ監督に、『月と少年』の制作について伺った。

『メリダとおそろしの森』
2D・3D同時公開中
『月と少年』『ニセものバズがやって来た』同時公開
配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン
http://www.disney.co.jp/movies/merida/

『月と少年』
http://video.disney.co.jp/1116.html

■ 作品のきっかけ

――アニメ!アニメ!(以下AA)
『月と少年』は非常にシンプルかつチャーミングな作品ですが、本作のアイディアはどういったかたちで生まれたのでしょうか?

――エンリコ・カサローザ監督(以下E・C)
これについては、ふたつのことを話す必要がありますね。
ひとつは、私自身の父と祖父についての思い出です。子どもの頃、私は父と祖父と一緒に住んでいたのですが、父と祖父はあまり仲が良くなかったのです。それぞれは私に話しかけるのですが、お互いに話そうとしないので、私はいつもふたりの間で戸惑っていました。この少年時代の思い出が物語の核になっています。

もうひとつは、わたしはもともとファンタステックな月にまつわる話がとても大好きだったことです。サン=テグジュペリの『星の王子様』などをよく読んでしました。
また、イタリアの作家イタロ・カルヴィーノが、月についての物語を多く書いていました。それも好きでした。
自分なりの月に関するオリジナルなお話が作れたら面白いのでないかと思っていました。

――AA
アニメーションは協業体制で作られますが、今回は短編ということもあり、監督の役割はかなり大きかったと聞きます。

――E・C
絵コンテは全て私が手がけました。それとキャラクターデザインも一部、自分でやっています。
ただ、私は技術的な部分はあまり得意でないので、そこは素晴らしいアーティストの協力で成り立っています。自分でやらなければいけないことは多かったですが、基本的には協力体制です。

アニメーションの絵コンテは、通常はアメリカでは分業体制なのです。今回は短編でもあり一人で行いましたが、長編となるとアメリカでは分業になると思います。
宮崎駿監督は一人でやると伺いますが、僕は彼ほど天才でないので、もし長編でやるとしたら分業になるでしょうね。協業でやることにはいいこともあって、ブレーンたちが私のような若手に様々なアドバイスをしてくれることです。

■ 影響を受けたのは宮崎駿、ピート・ドクター、ブラッド・バード、それに湯浅政明、今 敏

――AA
いま宮崎駿監督の話や、先輩のかたがたの話が出ましたが、特に影響を受けた作品や人物はいらっしゃいますか?

――E・C
宮崎駿監督はもちろんそうですね。ピクサーではピート・ドクター監督です。わたしは『カールじいさんの空飛ぶ家』でストーリーボードのアーティストとして一緒に仕事をしました。彼はエモーショナルな物語を模索していくのが得意で、そうした中にちょっとしたユーモアを盛り込みます。それは少し風変わりなのですが、そこが私の感性に近くて、大好きでとても尊敬しています。

私だけでなくピクサーのメンバーの全員が尊敬していると言えば、ブラッド・バード監督でしょう。ビジュアルの感覚が優れた人材が多いピクサーの中にあって、それだけでなくセリフや脚本もきちん書ける存在です。しかもそれがとてもシャープで、そこがブラッド・バード監督の優れているところです。
『レミーのおいしいレストラン』で一緒に仕事をしましたが、非常にインスピレーションを受けました。

――E・C
私は日本のアニメーター、監督にもかなり大きな影響を受けています。なかでも湯浅政明監督ですね。私は『マインドゲーム』の上映会をピクサー社内で企画して、みんなに紹介したほどです。テレビシリーズの『ケモノヅメ』からもインスピレーションを受けました。
また、亡くなられた今 敏監督も尊敬しています。これからさらに活躍はずだったかたで本当に惜しい才能をなくして残念です。
私はいつも意外な主人公というのが気になるのですが、今 敏監督の『東京ゴットファーザーズ』では、このキャラクターを主人公にするかというところがとても楽しかったです。

――AA
映画全体ではどうでしょうか?

――E・C
ピクサーのスタッフはアニメーションだけでなく、映画に対する愛情がとても深い人が多いのです。私自身もフェリニーや黒沢明が大好きで、(クラシック映画を得意としている)クライテリオンから発売されているシリーズは全部持っています。その作品からは、いまだに大きなインスピレーションを受けます。

     

「月と少年」(「メリダとおそろしの森」同時公開) エンリコ・カサローザ監督 インタビュー 前編

《animeanime》

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