ジープというと、ヘビーデューティーなオフロード4WDのイメージが強いが、ジープの最新モデルである『コンパス』は洗練された都会的なイメージを持つSUVだ。ベースは『パトリオット』で、プラットホームや主要コンポーネントを共用する。パトリオットがオフロードも走るジープブランドらしいクルマなのに対し、コンパスは街乗り重視の都会派SUVといった性格の違いがある。外観デザインは7本の縦型スリットがジープブランドのアイデンティティを伝えるとともに、全体的には『グランドチェロキー』にも似た都会的な雰囲気でまとめられている。またコンパスはジープブランド車として初めてFFの2WD車だけのモデルとされた。パトリオットにも2WD車はあるが、基本は4WD車なのでこのあたりにも違いがある。インテリアはツートーンカラーの配色で、レザーシートやソフトタッチ素材を採用することなどによって質感を表現している。リヤシートは60:40の分割可倒式で、リクライニング機能も付く。ボディサイズは全長は4460mmだからやや短めでコンパクトともいるが、全幅は1810mmに達して堂々たるワイドボディである。ただ、背の高いSUVはタワーパーキングに駐車することはまずないから、全幅の広さが使い勝手に影響することは少ないだろう。搭載エンジンは直列4気筒2.0リットルの自然吸気DOHCで、クライスラーがワールドエンジンと呼んでいくつかのモデルに搭載している機種。デュアル可変バルブタイミングを採用し、マニュアル操作が可能なオートスティック機能を持つ無段変速のCVTとの組み合わされる。動力性能は115kW/190Nmで、2.0リットルエンジンとしてはまずまずのレベル。コンパスのSUVボディを滑らかに走らせる。駆動方式が2WDであるため車両重量が1450キログラムとやや軽め。2.0リットルでも十分といった感じなのだ。オートスティックを動かして積極的な走りを試すと、それなりにキビキビした感じの走りが得られる。100km/hを6速でクルージングをすると2500回転と心持ち高めの回転数となり、室内騒音もそれなりに入ってくるものの、走りの実感が得られる。試乗車はコンチネンタルのプレミアムコンタクトという快適性重視のタイヤを履いていたが、215/55R18というサイズの大きさもあって、乗り心地は悪くないもののかなり硬めの印象があった。個人的には、SUVを選ぶなら4WDという古い考え方にとらわれているが、アメリカはもちろん日本でも、最近は2WDのSUVを設定する車種が増え、選ぶ人も増えている。コンパスは充実装備を備えたリミテッドだけの単一グレード車で、パトリオットのFF車であるスポーツよりも40万円も高い298万円の価格が設定されている。装備の中身を考えると納得モノの価格差だが、実際に購入するときには、コンパスにするかパトリオットにするかで迷うことになる。■5つ星評価パッケージング:★★★インテリア/居住性:★★★パワーソース:★★★フットワーク:★★★オススメ度:★★★松下宏|自動車評論家1951年群馬県前橋市生まれ。自動車業界誌記者、クルマ雑誌編集者を経てフリーランサーに。税金、保険、諸費用など、クルマとお金に関係する経済的な話に強いことで知られる。ほぼ毎日、ネット上に日記を執筆中。