【オートモーティブワールド12】トヨタ吉田常務「グローバルを考えつつ日本力を上げる」

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トヨタ自動車吉田常務 基調講演(オートモーティブワールド12)
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1月18日から20日にかけて東京ビッグサイトで開催されたオートモーティブワールド2012では、初日に日欧米のメーカー重役を招いての基調講演が行われた。トップバッターとして講壇に立ったのは、トヨタ自動車常務役員の吉田守孝氏だった。

吉田氏は「激動の自動車業界とカーエレクトロニクスへの期待」と題して、現在業界が直面する課題、環境・安全問題への対応、商品力向上の方向性、カーエレクトロニクスの課題と今後への期待を語った。

まず業界が直面する話題については、先進国から新興国へのシフトという、市場構造の変化を挙げた。日欧米の先進国市場は、21世紀に入ってからは成熟と言える状況にあり、販売台数が増大しているのは主として新興国市場である。この新興国市場では、先進国市場とは異なるアプローチが必要だと吉田氏は解説した。

「たとえばインドで2011年発売したエティオスは、日本円で約100万円と、我が国では低価格車として扱われますが、現地では高級車と見なされています。こうした状況に対応するために、企画や開発、調達、生産の現地化を進めるとともに、コンポーネンツはモジュラー構造とし、デザインやパッケージングとの『すり合わせ』によって、コストとバリューの両立を目指していきたいと考えています」。

環境問題への対応では、石油代替燃料にはそれぞれ課題があることから、当面は石油が主流になると述べたが、一方で各国の燃費規制は年々厳しくなってきていることも紹介。内燃機関やEV(電気自動車)、FCV(燃料電池自動車)などさまざまなパワートレインの開発を進めつつ、次世代環境車の本命としてHV/PHV(ハイブリッドカー/プラグインハイブリッドカー)を位置づける理由のひとつはここにあると説明した。

HV/PHVのリーディングメーカーらしい自信が感じられる言葉だったが、そのHV/PHVについても課題は山積していると吉田氏は語った。

「燃費規制をクリアするためには次世代環境車の普及が必要ですが、ただ燃費を良くすればいいわけではありません。さきほどのインドの例で分かるように、コストも大事になってくるからです。また半導体については、現在使っているシリコンIGBTの性能は理論限界に迫っており、SiC(炭化珪素)やGaN(窒化ガリウム)への転換を図る時期に来ているのではないかと感じています」。

プリウスより安価で燃費も良いアクアの登場は、グローバル的な視点で見ても必然であり、JC08モードで35km/L以上、筆者の運転による実燃費でも30km/L以上という驚きの数字は、電池や半導体の進化によってさらに伸びる可能性があることを教えられた。

安全問題に関しては、世界的には交通事故死者数は増加しているものの、日本においては幸い減少に転じている。しかし我が国における死亡事故の原因を見ると、認知・判断・操作といった人間系のミスが半分以上を占めている。吉田氏はここに注目し、今後は衝突安全だけでなく予防安全対策が重要になってくると述べた。一部のメーカーが商品化した衝突回避ブレーキについても、おそらく導入に向けて研究を進めているのだろう。

続いて商品力の向上に関しては、「FUN TO DRIVE, AGAIN」のキャッチコピーで象徴される操る楽しさの実現、生活や社会と「ツナガル」ことによる新しい価値の創出を挙げた。前者については4輪アクティブステアシステムなどの電子制御技術、後者についてはスマートフォンと車載情報端末の連携やスマートハウスの実証実験などを例として紹介した。いずれもエレクトロニクスがポイントということになる。

そのエレクトロニクスについては、制御構造の大規模化・複雑化や、安全性の向上、グローバル対応という観点から、ソフトウェアプラットフォームの標準化が重要であることに言及した。すでにトヨタは日産やホンダなどとともに、2004年にJasParという標準化組織を立ち上げており、欧州組織のAUTOSARとの間で標準化に向けた取り組みを進めている。

グローバルという言葉が随所で聞かれた講演だった。しかしながらトヨタは、決して日本を見捨てたわけではない。吉田氏は最後に、日本が生き残っていくためにはものづくりの力が大切であり、日本が持つ技術力や商品力を磨き上げ、いいクルマを作り続けていくことの重要性を強調した。

《森口将之》

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