東京商工リサーチが発表した2011年の円高関連倒産は前年比24.6%減の58件となった。
歴史的な円高水準が続く中で今回の円高関連倒産は、セーフティネット保証など政策支援や金融ADR制度の利用、取引銀行の資金繰り支援などもあって前年を下回っている。
ただ、過去の円高時と比べると円高関連倒産が年間600件を超えた1986年と1987年の水準には及ばないものの、1993年の44件、1994年の57件、1995年の105件、1996年の48件の期間と似た水準にある。
58件の産業別では、卸売業が37件で全体の6割以上を占め最多となった。次いで製造業の18件だった。さらに細かな業種別では、機械器具卸売業が13件、繊維・衣服等卸売業が8件、飲食料品卸売業が6件、その他の卸売業が4件となった。
形態別では、破産が38件と最多で、民事再生法が14件、銀行取引停止が5件だった。
2011年の円高関連倒産のうち「通貨デリバティブ損失」倒産が23件にとどまった。歴史的な円高水準が続くなか、今年の通貨デリバティブ損失倒産が増えない背景の一つには、金融ADR制度(裁判外紛争解決制度)の利用による企業の救済申請の急増が大きい。金融庁によると2011年9月までの1年間で申請件数が1320件にのぼった。さらに大手銀行を中心に、為替系デリバティブ取引で損失を被った企業には経営実態に合わせ、決済資金や融資などの資金繰り支援に積極的に対応していることも効果を発揮しているとみられる。