熱気球競技を空中から見る---自然の威力を体感

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ツインリンクもてぎオーバルコースを高度1kmから望む。白いテープ部分は震災での破損箇所。
  • ツインリンクもてぎオーバルコースを高度1kmから望む。白いテープ部分は震災での破損箇所。
  • 大量の液化石油ガスを気化させながら燃やす熱気球のバーナーの熱出力は壮絶。
  • ホンダ体験学習号。今回はカメラマンや競技空域の自治体のひとつ、芳賀町の豊田征夫町長などが同乗した。気球の容積は5000m3。一般家庭の浴槽2万5000杯分だ。
  • フライト直後は厚い雲に覆われていたが、離陸後1時間後あたりから次第に雲が切れてきた。
  • 紅葉の渓谷を飛ぶ競技気球。
  • ツインリンクもてぎ全体を上空から見渡す。
  • 雲間からの光彩の中を熱気球が飛ぶ。
  • この日は風の状況から一旦高度を取ってから下降してアプローチする選手が多かった。高度約1km。

熱気球競技の国内メジャーシリーズ「熱気球ホンダグランプリ」。国際公認レースを兼ねた11月の最終戦「2011とちぎ熱気球インターナショナルチャンピオンシップ」は、激闘の末に栃木出身のパイロット、藤田雄大選手が優勝、2位は水上孝雄選手と、欧米から参戦してきた名うての世界ランカーを抑えて日本人パイロットがワンツーフィニッシュを飾った。

大自然の中で風だけを頼りに飛ぶ熱気球レースは、文明生活の中ではともすると認識が気迫になりがちな自然の威力を再認識させられるという点で、実に意義深いものがある。高度によって風向、風速が異なるばかりでなく、その状況は刻一刻と変化する。

パイロットと地上クルーは無線で緊密にコミュニケーションを取りながら高度を変化させて風を捉えるのだが、それでも風の力だけで地上に設けられたターゲットに正確に向かうのはとてつもなく難しい。世界クラスの選手でも大失敗することは往々にしてある。

自然の営みの中でミスを犯してしまったとき、重要なのは何か。日本の熱気球競技黎明期に世界を目指して京大から参戦したことで知られる町田耕造・熱気球運営機構会長は「試練を前に立ち止まらないこと」だと語る。

「自然は気まぐれで、その中では人間は無力な存在です。いい風がばったり止まったり、予想外の風が吹いたりもする。うかうかしていると着陸も難しいような山に飛ばされたり。そういう時に一番大事なのは、立ち止まらないこと。どんな厳しいことであっても、それはすでに起こってしまったことで変えられないんです。そこで立ち止まって考えこんでも状況は良くなることはなく、確実に悪くなっていく。現実をあるがままに受け止めて、行動しながら考える。これが自然の力を利用する者の鉄則だと思います」

熱気球は人間にとって最も歴史の古い航空機で、別にエコロジーな乗り物ではない。大型の気球になると、1~2時間のフライトでプロパンガスを何本も消費してしまうなど、エネルギー消費の面ではむしろ効率は低い。が、単なる環境負荷低減ばかりがエコというわけではない。舵や推進装置を持たず、ただ風の力だけを利用して飛ぶという行為の中で、自然の中で生身の人間ができることの小ささや自然の利用法、また自然が頻々ともたらす試練に出会ったときの立ち振る舞いなど、多くのことを知るきっかけになるという点で、文化的にエコロジーなのが熱気球なのだ。

熱気球ホンダグランプリは来年2012年も桜の咲く季節に行われる渡良瀬バルーンレースを皮切りに、年間5戦が行われる。のんびり浮かんでいるだけに見える熱気球も、現場で見ていると飛び方も様々ということも見て取れるなど、変化があって面白い。開催時期がレジャーシーズンと重なることからも、観戦は行楽ドライブのきっかけとしてもお勧めだ。

《井元康一郎》

井元康一郎

井元康一郎 鹿児島出身。大学卒業後、パイプオルガン奏者、高校教員、娯楽誌記者、経済誌記者などを経て独立。自動車、宇宙航空、電機、化学、映画、音楽、楽器などをフィールドに、取材・執筆活動を行っている。 著書に『プリウスvsインサイト』(小学館)、『レクサス─トヨタは世界的ブランドを打ち出せるのか』(プレジデント社)がある。

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