ボーイング「787」はカーボンファイバーを機体の構造材に使用して、大幅な軽量化を果たしているのは有名な話だ。そのカーボンは日本製で高性能だが、高価でもある。
カーボンファイバーの製品が高価なのは、素材そのものが高いだけでなく成形にかなりの手間がかかるからだ。レーシングカーのモノコックなど本当に強度が必要なCFRPは、カーボンファイバーに熱硬化型樹脂を含浸させたプリプレグと言う素材を使い、型と密着させたまま加圧&加熱させるオートクレーブというマシンによって作られる。できるだけ樹脂を減らし、カーボンファイバーの密度を高めて成形することで軽量高強度なCFRPに出来るからだ。
東京国際航空宇宙産業展2011で、はやぶさの特設ブースも注目を集めたJAXAが、そんなオートクレーブ成形法の利点と、コストを抑えた大気圧下でのオーブンによる成形法であるVaRTM(真空樹脂含浸法)のメリットとを兼ね備えた、ハイブリッド成形法を研究していることを発表していた。
具体的には、VaRTMの、乾いたカーボンファイバーを型に当て、樹脂を流し込みながら真空状態のバッグに包んで密着させて加熱成型させる方法に、単純な形状で広い面積のみプリプレグを貼り合わせて成形するという。これによって成形品が入る大きさのオートクレーブを用意する必要がないため、航空機など大型機械のCFRP成形で低コスト化が狙えるそうだ。
基本的には航空宇宙分野の技術であるが、そこから民生用へと下ってくるのが最先端技術の流れ。近い将来、もしクルマのフロアパネルなどに応用できれば、一気に車体の軽量化が進みそうだ。