GAZOO Racingがチューンしたトヨタ『ヴォクシー/ノア』の「G's」仕様だが、さらに特別パーツを組み込んだ「G's Version EDGE」というモデルがある。
ノーマルの(という言い方も変だが)G'sは、すでに専用サスペンションキット、ブレーキパッドなどで武装されているが、Version EDGEでは、さらに見えないところに大幅な変更や特殊パーツが装備されている。
まず、ボディ下部、床下空力パーツ。フロント、ホイールハウス、サスペンションメンバーにスパッツと呼ばれる整流用のフラップが取り付けられている。これにより、タイヤのグリップと走行安定性を向上させる。前面投影面積が大きく、リアが切り立っているミニバンは、空力面では、ボディ下部の空気の流れをうまく処理することが重要だ。目立たず小さいパーツだが、高速走行などでは無視できないパーツだ。
そして、ミニバンでは普通ではないスポット増しによるボディ補強と前後のブレースとパフォーマンスダンパー。これらはボディ剛性を向上させ、クイックな動きを実現する。スポット増しは、フロントドアの開口部とサイドシル下側に施されている。競技車両などではサイドシルに発砲ウレタンを充填してボディ剛性を上げることがあるが、サイドシルの補強はボディのねじれ防止に効果が高い。
ミニバンにこれだけのチューニングを施す必要があったのか。トヨタ自動車カスタマーサービス本部 C&A開発部 カスタマイズ開発室 S-Conグループ長、河野和彦氏は、「最近の車は設計が最適化されており、純正部品をスポーツパーツに交換するだけではチューニングにならないこともあります。また、カスタマイズによって交換されることを前提にした設定や仕様では、交換後して取り外したパーツが無駄になってしまいます」とカスタム事情を説明する。
「それならば、最初から一定のレベルまで仕上げた状態で販売したほうがいいだろうということです。G's Version EDGEは、高速の安定性も自信ありますが、ワインディングでもかなりクイックに動いてくれるはずです」とのことだ。
確かにボディ補強のためのスポット増しは、後から行う場合、エンジンや内装、ドアなどすべて取り外してボディだけの状態にする必要がある。メンバーやフレームにブレースを取り付けるのも、高度な設計と大がかりな作業が必要だ。ベースとなる通常の「ZS」との価格差がおよそ60万円アップ(G's Version EDGEの希望小売価格は315万円)となるが、同じ仕様に後から変更することを考えれば妥当といえるだろう。