米国市場回復までの“ツナギ効果”が
今年度末までの措置として実施されている「エコカー補助金」が、2010年9月まで半年間延長される見通しとなってきた。
来年4月以降には国内需要の反動が懸念されていた自動車業界には、「大変嬉しい」(志賀俊之日産自動車COO)と歓迎する向きが多い。需要の反動減が半年後ずれするだけとの見方もできる。だが、依存度の高い米国市場が回復するまでのツナギ措置として国内生産の腰折れを防ぐ効果が期待できる。
政府は追加経済対策の柱として、エコカー補助金と省エネ家電へのエコポイントを延長することとし、今年度の2次補正予算に盛り込む方針だ。エコポイントについては1年後の年末商戦までを配慮して10年12月まで延長する方向。一連の延長措置は、今年の暮れから来春にかけて国内景気の「2番底が懸念される」(直嶋正行経済産業相)ためだ。
エコカー補助金は、今年4月10日から10年3月末までに登録するエコカーを対象として6月に受付を始めた。新規登録から13年を超えるクルマを廃車して買い換える場合は、登録乗用車で25万円が支給されるというスクラップインセンティブの要素もある。
◆暫定税率廃止なら「エコカー減税」は見直しへ
当初の1次補正予算には約3700億円が計上されたが、半年延長となると2300億円規模が2次補正に盛り込まれる。実現すれば、税収が落ち込み財政がひっ迫するなかでの破格の需要刺激策といえよう。
もっとも、来年度以降の国内新車需要にはなお不透明なところもある。自動車取得税や自動車重量税、ガソリン税などの暫定税率廃止問題とエコカー補助金とともに実施されている「エコカー減税」の扱いだ。
暫定税率の廃止はここに来て、不況による大幅な税収の落ち込みから与党内にも異論が出始めている。民主党がマニフェスト(政権公約)の柱に掲げてきただけに、よもや見送りはないだろうが、暫定税率廃止となればエコカー減税の見直しは必至だ。
◆地に付いた「出口戦略」構築を
エコカー減税は今年度から当初3年の予定で導入されたものの、減(免)税の対象となっている税金は取得税と重量税であり、暫定税率の廃止対象と完全に重なっている。暫定税率の廃止とエコカー減税の継続は、「財源からも両立は難しい」(大手自動車メーカー幹部)と見るのが自然だ。
自動車業界は、補助金の延長よりもエコカー減税の完全実施(3年間)を優先するスタンスだったが、補助金が延長されることになればホコは収めざるを得ないだろう。
暫定税率の廃止はすべてのクルマに適用される減税であり、仮にエコカー減税が今年度で廃止されたとしても、一定の需要喚起効果をもたらす。また、補助金の延長によって、国内需要反動減の顕在化は半年先延ばしされる。
中国とインドを除き、国内外の工場が低稼働率にあえぐ現状を立て直すため、半年の猶予が与えられたようなものだ。原価低減と固定費削減の手綱を緩めることはできないにしろ、地に付いた「出口戦略」をしっかり練ることが可能となる。