【池原照雄の単眼複眼】豊田章男社長、「本業」集中へアクセル

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名誉会長の「1代1業」も本体から分離

トヨタ自動車が「本業」集中への体制づくりを急いでいる。金融子会社の傘下にある証券会社を売却するのに続いて、住宅部門の分離独立を決めた。環境対応技術など「クルマを再発明する時代が目前」と言う豊田章男社長の危機感が、スピード感のある決断につながっている。

住宅事業はトヨタ本体の開発・生産機能などをトヨタホームに移管し、2010年10月に同社に集約する。トヨタは1975年に、トヨタ自工(現トヨタ自動車)内に「住宅事業部」を設置して、事業を開始した。当時、トヨタ自工の副社長だった豊田章一郎名誉会長による「1代1業」のプロジェクトでもあった。

一方、2010年4月での東海東京証券と合併含みで売却されるトヨタフィナンシャルサービス証券(トヨタFS証券)は2000年7月の設立。奥田碩・元社長による金融部門強化策の一環として開業していた。しかし、従業員の給与振込みの受け皿となるなど、銀行並みの事業展開を目指したものの、業容は伸び悩んだ。

◆金融事業は中核のオートローンに専念

住宅事業も黒字体質とはいえ、肝心の開発・生産はトヨタ本体にあり、親会社依存であったのはぬぐえない。分離独立させることで自立を促し、本体の負担も軽減する狙いだ。金融についても、自動車事業を補完するオートローンという中核部分に集中する体制としていく。

住宅も証券も、それぞれ進出を決めた人がトヨタでは偉大なため、今回のような決定は難しかったといえる。これは全くの空想の世界だが、住宅事業の集約に当たっては、こんな会話があったのではないかと思いを巡らせている。

章男社長「住宅部門を完全に分離しようと考えています」
章一郎名誉会長「思うようにやってみたらいい」

◆創業家社長だからできる事業再構築

一連の周辺事業再構築への決断は創業家出身の社長だから、このタイミングでできた。一方で豊田社長は「お客さまとの距離を縮める」狙いから、国内およびグローバル統括のマーケティング子会社を2010年初めまで相次いで設立する。これも本業集中策の一環だ。

トヨタの資金力からすれば、住宅も証券も従来の形態で存続したとしても、大きな重荷にはならない。それでも、あえてこの時期に断行するのは、「身の丈」に合わせて自動車事業の再建に全力を尽くしたいという決意を内外に示す狙いがあったようだ。

ともすれば扱いが難しかった2事業の見直しは、トップ自らの危機意識を発信するうえでも格好のテーマであった。

《池原照雄》

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