トヨタ新体制の舵取り、「地域」がキーワードに

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「産業報国」から「産業報地域」へ

トヨタ自動車は豊田章男社長をトップとする新経営体制が本格始動した。今期まで2期連続の赤字から早期の脱却を図り、新たな成長への基盤づくりを進める。豊田社長が掲げたキーワードは「地域」だった。

6月25日に就任後初の記者会見に臨んだ豊田社長は、まず「産業報国の実を挙ぐべし」という豊田綱領の1節を引き合いに「地域に根ざした企業」として「地域経済を豊かにすること」を経営の指針とする方針を示した。

そのためにトヨタが果たす役割を「各地域で明確に」すること、また商品開発においても「地域中心に大きく舵を切る」と明言した。頻繁に出てくる「地域」は、世界を地理的にあるいは自動車市場の特性に応じて区分けした地域である。

「産業報国」は産業を通じて国に報いるという意味だが、グローバルに事業展開する今日では「国」は「地球」あるいは「世界」に置き換わっている。豊田綱領をそうした現代版に置き換えたうえで、それぞれの地域にキメ細かな事業戦略を展開することが、地域貢献につながるという考え方だ。

◆副社長に担当地域の全権を

世界を日本、北米、欧州、新興国の4「地域」に分け、個々の実情に即した戦略を打ち出す。各地域には、5人の副社長のうち商品と技術開発に専念する内山田竹志氏を除き、4副社長をそれぞれの地域責任者として張り付けた。

たとえば、北米は生産担当の新美篤志副社長であり、生産技術や製造といった本来の業務分野とともに担当地域での事業展開にも全権をもたせる。従来は営業、生産、調達といった具合に担当副社長がそれぞれの地域に関与していたのを改めた。いわば「機能」から「地域・機能」への分担変更である。

豊田社長のこうした地域主義は、重きを置く「現地現物」という価値観から出ている。記者会見で注目されたのは、地域によっては「退くべき分野」も見定めるという発言だった。商品面に置き換えると「全方位フルラインナップ」の見直しということになる。

◆成功体験との決別

トヨタはこれまで、グループとして手掛ける軽自動車から大型トラックに至るまでの「フルライン」を強みとして、世界1の座にたどり着いた。あらゆる車種を用意しておけば、地域の市場特性に迅速に対応できた。2002年から年率50万 - 60万台の成長を遂げた原動力のひとつがフルライン体制だった。

しかし、中国やインドなどで新興メーカーが着実に力をつけている現状を考えると、トヨタのフルラインが今後も通用するかは疑問だ。フルラインでなく「古いライン」になるかも知れない。

退くべき分野の見定めや、フルラインの見直しは、これまでの成功体験との決別でもある。「地域」中心主義と表裏一体を成すものであり、トヨタを率いるうえでの「豊田カラー」となっていくだろう。

もっとも、地域主義は個々のニーズを優先する結果、全体で見るとラインナップの肥大化といった思惑とは逆の危険性も孕む。各地域の司令塔である副社長ら首脳陣のチームワークが従来にも増して問われることになる。

《池原照雄》

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