【池原照雄の単眼複眼】「ミニ自販」を復活させるトヨタ

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チャンネル担当役員が「地域」も兼務

豊田章男社長をトップとする新経営体制を発足させたトヨタ自動車が早速、懸案のひとつである国内営業の強化策を打ち出した。従来、販売チャンネルごとに貼り付けていた担当役員に、23日からは地域担当も兼務させることとした。

また、来年1月には市場調査から広告・宣伝までを統括するマーケティング会社を設立する方針だ。かつて「工・販」が分離されていた時代のトヨタ自動車販売(トヨタ自販)のような任務を託し、「売れるクルマ」の迅速な投入につなげていく。

国内営業の地域割りは、それぞれの地域事情や市場の特性に応じて販売施策を打ち出す狙いであり、豊田社長の「現場」主義の一環ともいえる。

これまでは常務役員がトヨタ、トヨペット、カローラ、ネッツというチャンネル別営業本部を担当していたが、東京を除く北海道から九州までを7ブロックに分けた地域の担当も兼務する。販売効率の悪い地域では、扱い車種の再編など4販売チャンネル体制の見直しも行われる可能性が高い。

◆1950年に分離された「工・販」

一方、「ミニ自販」ともいうべきマーケティング統括会社は来年1月の発足に向けて準備を進めている。豊田社長が会長を兼務する予定であり、既存の広告会社など数社を傘下に置く持ち株会社が構想されている。

この新会社のモデルともいえるトヨタ自販は、トヨタが経営危機に瀕していた1950年に、当時のトヨタ自動車工業(トヨタ自工)から分離して設立された会社だ。金融機関からの融資の条件として工・販の分離を迫られたものだった。

当時、最大のライバルであった日産自動車も同じような経営環境にあったが、販売部門の分離には至らなかった。だが、ここから両社の明暗が分かれていった。

◆市場密着の商品づくりへ誘導

分離を機に、トヨタは自工と自販がそれぞれの持ち場に集中したのだ。「売り手」の自販は、全国の有力地場資本や経営者を発掘し、国内最強のディーラー網をつくりあげた。「作り手」の自工は独自の生産システムの確立など競争力あるモノづくりにまい進した。

自販はマーケティングにも磨きをかけた。市場のニーズを汲み上げて、売れる商品を自工に進言、それを自工が品質・コストなどで競争力ある商品に仕上げるという好循環ができあがった。その後、自工と自販は82年7月の合併で元の鞘に納まり、「ひとつのトヨタ」として海外展開の時代に着実な成果をあげてきた。

2期連続の赤字という現状は、倒産の可能性もあった1950年当時以来の危機的状況ともいえる。設立が準備されている「ミニ自販」の機能は、「作り手」に傾斜した論理から脱し、市場に密着した商品づくりに誘導することに尽きる。ただ、来年といわず、もっとスピード感が必要なのではないか。

《池原照雄》

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