【池原照雄の単眼複眼】トヨタ、堅め予想で赤字拡大を甘受

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下方修正回避への強い意志

トヨタ自動車が8日発表した2010年3月期の業績予想は、前期(09年3月期)より赤字幅が拡大する厳しい内容となった。実際、米国など先進諸国の需要回復が不透明なので、楽観はできない。

加えて前期は3度の下方修正を余儀なくされたことや、今期は新経営体制が発足することなどもあって、「下方修正だけは避けたい」との強い思いが赤字拡大予想に込められている。

今期の連結新車販売(中国合弁分など除く)は、前期より14%少ない650万台で、106万台の減少を見込んでいる。この結果、売上高は19.6%減収の16兆5000億円とし、赤字額は営業損益で前期の4610億円から8500億円に、最終損益は4370億円から5500億円に膨らむ予想とした。

トヨタの業績予想は、常に保守的に見て積み上げるのが伝統だ。それにより、多少の需要や為替の変動があっても予想から大きく逸脱するのを回避してきた。

◆日本の補助金効果は織り込まず

前期は、後半から大きな経済異変に巻き込まれたので下方修正の連発もいたし方ないところだが、今期は平時よりさらに保守的に、堅めに見て前期のテツを踏まないという覚悟が見えてくる。

販売計画については、主力である米国の09年需要は「950万台から1000万台」(渡辺捷昭社長)を前提にしている。トヨタ同様に今期業績を「堅く」見たというホンダは「1050万台レベル」と想定しているので、トヨタの方がより慎重だ。

政府が打ち出した国内の需要刺激策についても、環境対応車への減免税(4月1日実施)については反映したものの、4月10日に遡って実施予定のスクラップインセンティブを含む補助金については織り込まずに販売計画を立てた。

この補助金による国内需要の押し上げ効果は、今期中に69万台と想定されている。仮にそうなるとほぼ4割のシェアをもつトヨタグループには28万台程度の販売増につながることになる。

◆緊急収益改善も保守的に見積り

一方で、昨年11月から取り組んでいる緊急収益改善による増益効果も現時点では低めに見積もっているようだ。渡辺社長は8日の決算発表の際に、原価改善で3400億円、固定費の削減で4600億円の合計8000億円という数字を掲げた。

この数字については、原価改善、固定費削減ともに5000億円の計1兆円というのが社内でのチャレンジ目標ということを、先に幹部から聞いたことがある。原価改善に反映される鋼材など原材料費の値下がり効果は、まだ十分に織り込まれていないようで、全車種への展開を始めた緊急VA(価値分析)の成果拡大も期待できる。

いずれにせよ今期の業績も世界の新車需要と為替動向という不透明な要素に左右され続ける。今後それらが2番底に陥らなければ、現時点のトヨタの赤字予想額は縮小へと上方修正されることになる。

《池原照雄》

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