【池原照雄の単眼複眼】「雇用」に淡白になった自動車メーカー

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経営のモラルハザードの域に

日本の自動車メーカーは、いつから雇用の確保という社会的責務に淡白になったのかと思う。非正規雇用、とりわけ派遣従業員をこれだけ大量に抱えているとは意外だった。雇用の「調整弁」として経営者には便利な労働力かもしれないが、そういう考えで過度に依存するのだとすれば、経営のモラルハザードの域に達している。

現時点で自動車メーカーが2009年3月までの1年間に解雇する派遣従業員や期間従業員は、1万4000人規模となっている。今後の減産状況によっては、さらに増える可能性もある。

クルマの世界市場が同時崩落に見舞われており、コスト圧縮に即効性がある非正規従業員に目が向けられている。製造現場への派遣は04年に解禁となり、06年当たりから急増した。09年には最長契約期間の3年を満了する人が多いので派遣労働の「09年問題」とも指摘されてきた。

◆「いつでも切れる」労働力に依存

自動車産業については、09年問題に至る前に大量解雇の事態となった。非正規従業員は、契約期間前であっても雇用者の事情で解約できる契約が一般的だ。

自動車メーカーのなかには、こういう事態になっても期間従業員との契約期間をきちんと守り、満了前の解雇はしない企業もある。逆に、契約期間を延長したばかりなのに、延長分はおろか従来の期間にも達しないのに解雇通知されたというケースも出ている。

とくに、各社が直接雇用しない派遣従業員は、「いつでも切れる」労働力と見られており、実際、そう動いた企業が多い。派遣労働は今世紀になって一気に規制緩和が進み、自動車産業でも採用が加速したが、生産現場の非正規雇用はせめて期間従業員にとどめるべきでないか。

◆リストラへの感覚がマヒ?

期間従業員は3か月、半年、1年と比較的長いレンジでの雇用となるし、働く側も企業との直接契約なので安心感がある。自動車メーカーでは一定の能力に達し、本人が希望する期間従業員を正規雇用に採用する動きも一部で定着している。雇用面での社会的責任を果たす地道な取り組みだ。

非正規とはいえ従業員をいとも簡単に解雇するという風潮に染まったのは、いつからだろうか。90年代末から今世紀初めにかけて外資提携企業でのリストラ手法が多分に影響しているように思える。リストラ万能と、感覚がマヒしているのではないか。

日本メーカー(日本車)の強さは生産現場にあるのは自他認めるところだ。その現場での従事者を大事にしない風潮が続くようだと、目先、業績の辻褄を合わせても、その企業の成長力は持続しないだろう。

《池原照雄》

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