昨年3月、秋田県男鹿市内を走行中のクルマのハンドルを強引に切って対向車との衝突を誘発、運転していた母親を殺害したとして、殺人や傷害の罪に問われている29歳の女に対する判決公判が13日、秋田地裁で開かれた。裁判所は懲役7年6か月の実刑を命じた。
問題の事故は2007年3月22日午前に発生した。秋田県男鹿市脇本田谷沢要沢付近の県道を走行していた54歳女性の運転する乗用車が対向車線側に逸脱。対向車線の普通トラックと正面衝突した。双方の車両は大破。乗用車を運転していた女性が首の骨を折って死亡。対向のトラックを運転していた43歳の男性も右足骨折の重傷を負った。
その後の調べで、乗用車の助手席に同乗していた29歳の女がハンドルをつかみ、故意に衝突させていたことが判明したため、検察は殺人や傷害容疑で起訴。殺人を主張する検察側に対し、被告側は起訴事実を否認。「事故は無理心中を図ったことによるものだが、事故によって死亡した女性(母)の同意があり、殺人にはあたらない」と主張していた。
13日に開かれた判決公判で、秋田地裁の藤井俊郎裁判長は死亡した女性に無理心中に同意する動機が無かったことを指摘。「死亡した女性が抵抗や説得をせず、被告の提案(無理心中)受け入れるとは到底考えられない」とした。
また、被告側は「事故当時は心神喪失か心神耗弱の状態にあった」と主張していたが、裁判長は被告が受診していた精神科医らの証言などからこれを否定。刑事責任能力を有していたと認定した上で「母を道連れに自殺を決意した動機は、極めて短絡的かつ自己中心的。起訴後も不合理な弁解を繰り返すなど、刑事責任は重大だ」と述べ、被告に対して懲役7年6か月の実刑判決を言い渡した。
被告はこれを不服として、即日控訴している。