【池原照雄の単眼複眼】自動車10社、新興市場開拓で今期も好業績確保

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第3Q終わり、下方修正はゼロ

自動車メーカー各社の第3四半期までの決算が出揃い、2008年3月期通期も好業績が確実となった。新興市場の開拓で円高やサブプライムローン問題による米国市場の鈍化などを乗り越えており、10社のうちトヨタ自動車やホンダなど5社が通期純利益で過去最高を更新する。

非上場の三菱ふそうトラック・バスと日産ディーゼル工業を除く10社の2007年4 - 12月期連結営業利益は、いすゞ自動車を除く全社が増益を確保した。経営再建途上で前年同期比約8.2倍の増益になった三菱自動車工業は別格として、ホンダ、日野自動車、ダイハツ工業が3割前後、スズキが18%、トヨタが12%と2ケタの営業増益となっている。

このため昨年の9月中間期時点に公表した通期業績予想を下方修正する企業はなく、逆にホンダ、三菱自動車、ダイハツの3社が営業利益予想を上方修正した。ホンダとダイハツは純利益についても上方修正している。

◆トヨタは「実質上方修正」

第3四半期は、ユーロ円が引き続き円安で推移したものの、ドル円はおおむね1ドル=5円の円高と速いピッチでの為替変動があった。年間ベースに直すと1ドル1円余りの円高であり、トヨタの場合だと営業利益段階で350億円から400億円もの減益要因となる。

同社は通期の業績予想を据え置いたが、ある幹部は「第3四半期での急速な円高を考慮すると、実質、上方修正と受けとっていただきたい」と明かす。円高や北米販売の伸び悩みという逆風を、新興市場や資源国市場での増販と原価低減でカバーしたのが、トヨタの第3四半期業績のポイントだった。

中国を含むアジアなど新興市場や、中東、ロシアといった資源国での販売の伸びが好業績をもたらしたのはトヨタに限らず、業界全体の流れでもある。ホンダの9か月通算の地域別営業利益はアジアが88%、南米やアフリカなどを含む「その他の地域」が59%と驚異的な増益を確保した。

◆為替変動ヘッジにも効果が

さらにスズキはインド、三菱自動車はロシアといった具合に2ケタ増益企業はいずれも急成長市場での販売増をバネにしている。こうした日本各社のフロンティア市場の着実な開拓は、為替変動へのヘッジとしても機能しつつある。

円の対米ドル変動の影響が最も業績に反応しやすいホンダだが、第3四半期は1ドル=5円の円高にも拘わらず、営業利益段階での為替影響は29億円の増益要因だった。ユーロやアジア通貨などの円安効果や、米ドルとユーロといった「他通貨間」での変動も増益要因に作用したからだ。

米ドル以外の為替がたまたま増益方向になびいたともいえるが、米ドル以外の通貨でのビジネスが着実に増えた証であり、一時的な現象ではないと見ている。それだけに、フロンティア市場の順調な刈り取りがもたらす今期の各社の好業績は、これまで以上に価値あるものと言える。

《池原照雄》

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