仏シトロエンは9月29日、パリ・シャンゼリゼ通りに新ショールーム『C42』をオープンしたが、それに先駆けて27日に行なわれた報道発表会では一風変わったパフォーマンスが披露された。
発表会場のホールには純白の壁だけが設けらていた。まもなく吊りズボンを履き、帽子を被った3人の“ぺンキ職人”が、無言でBGMもなく登場。
日本人からするとさながら「スーパーマリオ」に見える彼らは、シトロエンのイメージカラーである赤ベンキで、まずは淡々とシンボルマークの「ダブルシェブロン」を幾重にも描き始めた。
彼らは、新ショールームの設計を担当した建築家M. ゴートランやG. ミシェル・シトロエン社長によるスピーチ中も、黙々と背後で描画を続けた。ダブルシェブロンは、描き続けられてゆくうちに、新ビルのグラスセクションをイメージした絵に変化していった。
そしてゴートラン、ミシェル両氏によって「ようこそ、私たちの家へ」とサインが入れられ、作業完了となった。
とかく自動車関係の発表イベントは音響と映像を駆使した華やかなものが多く、近年はアクロバットを使ったスペクタクル仕立てのものも増えている。
しかし今回のペンキ塗りパフォーマンスは、ゴートラン氏のコンセプトであるダブルシェブロンをモチーフにしたガラス形状や、ミシェル社長が強調する「常にアートとともに歩むシトロエン」を的確に表現していた。
アイデア次第では、“人海・ほのぼの戦術”でも充分関係者の注目をひくことができ、意図が伝わるという好例である。