【伊東大厚のトラフィック計量学】運輸のエネルギー効率30%アップへ…CO2半減へのシナリオその5

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【伊東大厚のトラフィック計量学】運輸のエネルギー効率30%アップへ…CO2半減へのシナリオその5
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「2050年までのCO2半減」に向け、我が国の運輸部門ではどのような戦略をとろうとしているのだろうか。5月、経済産業省から発表された「次世代自動車・燃料イニシアティブ」では、5つの自動車・燃料技術--(1)次世代バッテリー、(2)水素・燃料電池、(3)クリーンディーゼル、(4)バイオ燃料、(5)ITS--の開発と普及によって2030年までに石油依存度80%とエネルギー効率30%アップを謳っている。

◆バッテリーカーは“3度目の正直”となるか 

「次世代自動車・燃料イニシアティブ」は、5つの技術のうちバッテリー技術を第一に挙げている点が特徴だ。バッテリー技術には、100%電気で走るバッテリーカーに加え、ハイブリッドカーや家庭からの充電も併用できるプラグインハイブリッドカーへの応用も含まれる。なおバッテリーカーが注目されるのは、1970年代と1990年代に続き今回が3回目である。電池性能の急速な進歩などを背景に、今度こそ普及の可能性があるとしている。(図1)

自動車用電池の性能は、充電1回で何km走れるか、である。ガソリン車は給油1回で400−500kmは走るが、まだ電池のみでは長距離の連続走行はできない。しかしタウンユース中心なら、100km程度の連続走行可能になれば夜ガレージで充電できるため、電気切れの懸念はなくなってくる。タウンユースの場合1〜2名乗車も多いので、複数保有世帯なセカンドカーとして、あるいは普段コンパクトなバッテリーカーを使い長距離ドライブの時はレンタルで、というライフスタイルを選ぶ人も出てくるかもしれない。

◆ITSで都市の渋滞を減らす

「次世代自動車・燃料イニシアティブ」のもうひとつの特徴は、自動車や燃料の技術だけでなく交通の効率アップを織り込んでいる点だ。信号制御や交通情報の高度化などITSを活用し渋滞を解消することなどが柱となっており、三大都市圏の平均走行速度を2015年に1.5倍、2030年に2倍、を目標にしている。

この10年で、都市部の平均走行速度はあまり変化していない。各地で渋滞対策がなされているが、平均値にすると、速度の改善幅はごく僅かに留まっている。(図2)。

交通の効率アップは、エネルギーやCO2対策に加え、年間12兆円と言われる国民全体の渋滞損失の解消や物流の効率アップにもつながる対策だ。走行速度1.5〜2倍アップは高いハードルではあるが、環状道路の整備や課金による交通誘導など、実現のため様々なメニューを検討する必要があるだろう。

◆2030年といっても…

技術革新は研究開発や普及に時間がかかるため、それほど猶予があるわけではない。例えば乗用車の新燃費基準は2015年度で04年度比23.5%アップだが、すべてが新車に代替するには10年はかかるので、完全に効果が出るのは2025−30年頃となってしまう。2030年に効果を顕在化するには、今後約10年で実用化できる技術を見極め、研究開発と普及策を重点化することが大事だと思う。

《伊東大厚》

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