神様はブラジル人…ワールドカップ 必勝法はメシを食う、風呂に入る

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神様はブラジル人…ワールドカップ 必勝法はメシを食う、風呂に入る
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この春に大学を卒業して就職したばかりの教え子の一人が、こともあろうかジーコ監督の通訳をする機会に恵まれたと報告してきた。役割上ジーコ監督の話をすべて聞くことになった彼女によると、彼(ジーコ)にとってのサッカーとは、「監督ががんがん上から命令し、全てを決め、選手がそれに従うというものではなく、もっと選手が率先してクリエイティブなプレーをするものである」ということだそうだ。

そのためには選手同士のコミュニケーションを円滑にすることや、信頼関係の構築が不可欠となる。4年前に日本代表チームの監督に就任した彼は、彼の哲学を実践するために、チーム作りに着手する。その中で彼は、食事をチームのみんなで一緒にとることや、家族ぐるみの付き合いをするといったことをごく自然な形で採り入れていったということである。

そのことで思い出されるのが、5月25日のテレビニュースに出ていた日本サッカー協会川淵会長の満面の笑顔である。彼は「朝の食事なんてこの4年間で一番いい雰囲気だった。4年前なんて、お互い『一緒にメシなんか食ってられるか』って感じだったのにね」とそれはもう嬉しそうに語っていた。僕からすれば、それはこの4年間で一番いい川淵キャプテンの笑顔であった。彼はそうとうな手ごたえを感じているのだろう。宮本選手など「みんな一緒に風呂に入っている」とまで言っていたくらいだから、チームの結束はかなりのものであるはずだ。

このような話を聞くと、「チームづくりとはいったい何か」ということをつくづく考えさせられる。前指揮官である、フィリップ改めオマルはいったい何をしたか。「今のチームの基礎を作ったのはトルシエである」という意見を僕はあまり評価しない。試合の勝利数やゴール数だけで監督の技量を量るようなこともしたくない。たとえ今回のワールドカップでどういう結果になろうとも、僕はジーコという「最高の指導者」が日本代表を率いたことをいつまでも誇りを持って語り続けていくつもりである。

思わぬ幸運を手に入れた僕の教え子は、その報告メールを「とにかくジーコは終始穏やかで、普通のブラジル人のおじさんと変わりのない、すごく優しい人でした。みんなでワールドカップ応援しましょう」という文章で結んでいる。もちろんである。

筆者紹介:高木耕(たかぎ・こう)---神田外語大学国際言語文化学科講師。専門はラテンアメリカ地域研究。筑波大学大学院地域研究研究科修了。ジーコ監督が現役だった1980年代の前半をブラジルのリオデジャネイロで過ごす。外務省専門調査員(在コロンビア日本国大使館勤務)、国際協力機構(JICA)長期派遣専門家(ブラジル勤務)を経て現職。通訳や雑誌用の翻訳、テレビ番組制作のためのテープ起こしなどでサッカー関連の仕事経験が多数ある。

《高木耕》

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