人間搭乗型二足歩行ロボットはこれまでにも複数の企業や研究機関によって試作されてきたが、人間を乗せて歩くために頑強な構造とハイパワーなモーターを実装する必要があるため、システム上も外見上も大型で武骨というイメージがあった。
早稲田大学とテムザックが共同開発した「WL-16R III」は、既存の二足歩行ロボットに比べてずっと簡便、軽量というのも大きな特徴である。本体の重量は少し大柄な男性程度の68kgにとどまっている。「じきにロボットの自重と同じ体重の人を乗せられるようになる」(開発関係者)という。
華奢な構造の脚、小型のモーターで人間を搭載できるようになったのは、脚の支持部を強度の出しやすい3点支持とし、関節の回転や曲げではなく、脚そのものを伸縮させ、その長さのパターンで姿勢をコントロールする「パラレルリンク機構」を採用しているためだ。
脚の上部には、ロータリーエンコーダーという回転角、回転速度をきめ細かく制御するためのセンサーを備えた出力150Wのモーターが備えられ、ベルトドライブで脚の伸縮運動を行う。歩行実験でもそれらが実にレスポンスよく作動しているのが確認できた。
こうしたパラレルリンク機構や、高精度な回転制御機構を備えたモーターによるアクティブ制御は、最新の自動車工学にも通じるものがある。ヒューマノイド・テクノロジーの発展は、自動車工学との相乗効果も大いに期待できる。