新型フォルクスワーゲン『パサート』のサスペンションは前・ストラット、後・マルチリンクの4輪独立懸架。軽合金を多用してバネ下重量を軽量化、さらに前後とも強固な防振サブフレームにマウントすることで、正確なハンドリング性能と快適な乗り心地、静粛性を両立させているという。
前・マクファーソンストラットサスは、マルチリンク式だった旧型から一見後退しているようだが、フォルクスワーゲンはシンプルなストラットサスペンションでキャンバー(路面に対するタイヤの接地角)コントロールをアクティブに行う機構を考案したメーカー。パサートのストラットサスペンションもマルチリンクと同等の機能を持っている。
一方、ロアアームやピボットベアリングのアルミ化、スタビライザー構造の改善などにより、左右合計で13.3kgものバネ下重量の軽量化を果たし、路面への追従性を飛躍的に向上させている。
後サスは全グレードとも新設計のマルチリンク式。こちらは旧型のトレーリングアーム(FWD)ないしダブルウィッシュボーン(4WD)から大幅に進化した。リンク数は4本で、3本の横向きアームと1本のトレーリングアームで構成され、縦方向、横方向の入力に独立して対処できるのが特徴だ。
前サスに高機能なストラット、後サスにマルチリンクという組み合わせは近年のフォルクスワーゲンが好んで用いるものだ。機構的には近年のホンダのFF車とも重なるものがあり、設計思想の変遷が興味深い。実際の乗り心地やハンドリングは、実車の試乗機会を待つ必要があるが、設計の合理性やジオメトリなどを見る限り、よい仕上がりを期待できそうだ。