逆走と赤信号無視は「重大な交通の危険」---最高裁判断

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飲酒運転の末に対向車線を逆走、さらに赤信号を無視して交差点に進入して衝突事故を起こして2人に軽傷を負わせたまま逃走したとして、危険運転致傷罪に問われた35歳の男に対する上告審で、最高裁第2小法廷が上告棄却の決定を行っていたことが16日に明らかになった。決定は14日付け。

問題の事故は2003年11月25日の午前2時30分ごろに発生している。北海道札幌市北区北40条西5丁目付近の市道で、信号待ちを行っていたクルマを対向車線側に進出して追い越し、さらには赤信号を無視して交差点に進入した乗用車が強引に右折しようとしたところ、交差道路の右方から左折進入してきた軽トラックと正面衝突した。この事故で軽トラックは小破し、乗っていた2人が打撲などの全治8日間程度の軽傷を負った。

乗用車はそのまま現場から逃走していたが、警察では2005年2月に暴力団員を自称する34歳(当時)の男を業務上過失傷害と道路交通法違反(ひき逃げ)容疑で逮捕している。捜査の過程でこの男は飲酒運転の発覚を逃れるために逃走したことを自供。信号無視についても「青信号に変わるのを待っていられなかった」と供述。検察は「赤信号の殊更無視など、複数を要因とする悪質な故意によって引き起こされた事故」と認定し、罪状を危険運転致傷罪に変更して起訴していた。

一審の札幌地裁、二審の札幌高裁ともに被告の責任を認め、懲役1年6カ月の実刑を命じていたが、被告弁護側は「事故の原因は赤信号無視ではなく、対向車線の逆走にあった」と主張。被告が衝突前に急ブレーキを使用し、衝突時の速度が20km/h程度だったと考えられることから「重大な交通の危険を生じさせる速度ではなかった」などとも主張し、危険運転罪の法解釈に問題があるとして最高裁に上告している。

最高裁第2小法廷(古田佑紀裁判長)は「被告が赤信号の表示を殊更に無視し、対向車線に自車を進出させた行為自体が危険運転にあたり、周辺の交通に重大な危険を与えた」と判断。相手側が負傷したのも事故と因果関係があると認め、一審と二審の判断は適正として被告側の上告を棄却する決定を行い、二審判決が確定した。

事件発生から逮捕までに約1年3カ月の期間があり、飲酒量が特定されないために飲酒運転については問われなかったが、赤信号の無視、停車中の前走車を追い越す目的での対向車線の逆走など、いずれも「故意に行った」と判断されるもので、危険運転罪の構成要件はクリアしている。被告側が「衝突時には低速だった」と主張したところで、こうした行為が「悪質ではない」と肯定される余地もなく、二審までの判決を支持するという判断は適正といえるだろう。

《石田真一》

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