レトロモビルでは、毎年会期中にクリスティーズのオークションが開催される。11日夜7時半から行なわれた今年のオークションでは、自動車と関連アート合わせて90点が競売に掛けられた。今回の呼び物は、昨年死去した前ローマ法王・ヨハネパウロ2世が所有していたクルマ。
ただし、法王になってからのものではない。生地ポーランドにおける聖職者時代の1958年に購入した国産車FSO『ワルシャワM20』だ。したがって法定書類も、まだ本名の「キャロル・ジョゼフ・ウォイティワ」になっている。
FSOは戦後1951年に、ソビエトのGAZ車のライセンス生産からスタートしたポーランドの工場で、M20もGAZの流れを汲んでいる。やがてフィアットと提携。同社製モデル『125』の現地版などを手がけたが、90年代に入って韓国の大宇によって買収された。
“法王のクルマ”はオークションの中盤、1万ユーロ(約140万円)から競りが始まり、たった2分ほどで6倍の6万ユーロ(約840万円)まで上がった。しかし、出品者が設定した最低価格20万ユーロ(約2800万円)に達せず、売買は不成立に終わった。クルマは傷みが激しく、いわば「現状渡し」の状態だった。法王のご威光も、錆には勝てなかったか?