今年2月、泥酔状態で軽自動車を運転中に8人を死傷させるひき逃げ事故を起こしたとして、危険運転致死傷や道路交通法違反の罪に問われた32歳の男に対する論告求刑公判が22日、千葉地裁で行われた。検察側は併合罪を適用し、懲役25年の実刑を求めた。
問題の事故は今年2月5日の午後9時20分ごろ発生した。千葉県松尾町下野付近の県道を歩いていた男女8人に対し、猛スピードで走ってきたクルマが後方から突っ込んだ。事故を起こしたクルマはそのまま逃走。はねられた8人は衝突の衝撃で数十メートル先まで弾き飛ばされ、このうち59歳の男女4人が全身打撲が原因で死亡、他の4人も重軽傷を負った。
警察では翌6日朝に出頭してきた31歳の男を業務上過失致死傷と道交法違反(無免許運転)の容疑で逮捕したが、男は事故当時に泥酔状態だったことが判明。さらには事故後に知人のクルマを盗んで帰宅していたことが判明。警察では「極めて悪質」として、危険運転致死傷容疑で送検。検察側もこれを支持して同罪で起訴していた。
22日に行われた論告求刑公判で、検察側は「被告には規範意識が著しく欠けており、真剣な反省がない。被告は法廷で申し訳ないと言うが、その一方では従前の主張(泥酔状態ではない、人をはねたとは思わなかった…等)を繰り返し、謝罪の言葉がむなしく響く」と指摘した。
その上で「危険、無謀運転の典型で悪質。事故は起こるべくして起きたもの。非人間的な犯行で酌量の余地はない」として、裁判所に対して併合罪の適用と、懲役25年の実刑を求めた。
危険運転致死罪の最高量刑は20年の実刑だが、今回の事件では道交法違反(ひき逃げ、無免許)と窃盗も加わるため、併合罪の適用が可能となる。25年という求刑は交通事故の公判においては現状で最長のものとなる。