逃走男に未必の殺意、懲役14年の実刑判決

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パトカーから逃れようと渋滞している道路へ強引に進入し、その途中で男性をはねて死亡させたとして、殺人などの罪に問われた29歳の男に対する判決公判が9日、福岡地裁で開かれた。裁判所は男に懲役14年の実刑を命じている。

問題の事件は2002年12月20日に発生している。午前7時10分ごろ、窃盗の容疑で指名手配されていた27歳(当時)の男が運転する盗難車を福岡県警のパトカーが発見。警官は停止命令を出したが、男はこれを振り切って逃走した。

パトカーはこれを追跡したが、男のクルマはその後も約30分間に渡って逃げ続け、午前7時40分ごろには福岡市博多区空港前の交差点に到達、渋滞中の車列の真ん中を強引に突っ切ろうとした。

クルマは周囲のクルマに接触や衝突を繰り返しながら前進。衝撃音に異変を感じて車外に出た43歳の男性をはねても止まらず、そのまま進み続けた。男性は近くの病院に収容されたが、約2時間後に全身強打が原因で死亡している。

男は進路を福岡市中心部に進めようとしたが、パトカーに進入を阻まれて志免町方面にUターン、同町内に設置された検問所に追い詰められた。

男はクルマをパトカーに体当たりさせるなどの抵抗を繰り返した。最後はクルマを捨てて逃走しようと試みたが、警官数人に取り押さえられ、業務上過失致傷と道路交通法違反などの現行犯で逮捕。後に容疑が同致死へと変わった。

容疑が悪質なことから、警察では危険運転致死の適用も視野に入れていたが、検察は「殺人罪が相当」として、同罪で起訴していた。

公判が開始されて以後、男は「車外に出た被害者を認識しておらず、ひき逃げにはあたらない」と無罪を主張してきた。

しかし、9日に開かれた判決公判で、福岡地裁の林田宗一裁判長は「被害者はクルマの前部ではねられており、被告は運転席から被害者の姿を正面に見る状態にあった」と指摘。

「これを見落とすとは考えにくく、被告は被害者の姿を認めながら、逃走するためにそのままクルマを進めた」と認定した。

そしてこの部分に未必の殺意が生じていたとも認定。

殺人罪適用の正当性も認めた上で「被告は逮捕を免れようとする一心で、目前の被害者を認識しながら、躊躇することなくクルマを発進させた。動機は身勝手で人命軽視も甚だしく、情状を酌量する余地もない」とまとめ、懲役14年の実刑判決を言い渡した。

《石田真一》

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