「睡眠時無呼吸症候群」が原因の衝突事故で無罪

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居眠りを原因とする衝突事故を起こし、3人に重軽傷を負わせたとして業務上過失傷害罪に問われた59歳の男に対する判決公判が9日、大阪地裁で開かれた。裁判所は被告が睡眠時無呼吸症候群(SAS)だったことを理由に無罪判決を言い渡している。

問題の事故は2002年8月10日に発生している。同日の夕方、古座町内の国道42号線で、57歳(当時)の男が運転するクルマが対向車線に逸脱。順走していた20歳代の男性が運転する軽自動車と正面衝突した。

この事故で双方のクルマは大破し、軽自動車を運転していた男性と同乗の女性が全治2年近い重傷を、逸脱側のクルマに同乗していた男性も全治1カ月の重傷を負っている。警察では逸脱側のクルマを運転していた男を業務上過失傷害容疑で逮捕。後に男は同罪で起訴された。

しかし、男は「事故前の記憶がまったくない」と供述。当初は事故による頭の強打による記憶障害が疑われたが、医療機関による診察の結果、男性は中程度から重度の睡眠時無呼吸症候群(SAS)であることがわかった。

SASは睡眠中に気道が塞がれたり、狭まったりして数十秒間の無呼吸状態を繰り返すもので、熟睡が出来なくなる。この結果、昼間に突発的な居眠り状態に陥ることがあり、本人にその自覚症状が無いという特徴もある。

男のクルマは対向車線に逸脱後、衝突までの約4秒間に渡って走り続け、この間に約70m進行していた。このため、弁護側では「通常の居眠り運転とは違い、本人の自覚ができない部分で起きた。当時はSASの症状がほとんど知られておらず、クルマの運転を避けるなどの注意義務も果たせなかった」として無罪を主張していた。

9日に開かれた判決公判で、大阪地裁の杉田宗久裁判長は被告がSASだったことを認めた上で、「当時はSASがどのような症状であるかが一般には知られておらず、被告は自らが突発的な居眠り状態に陥るという自覚も無かった」と指摘した。

さらに「通常の居眠り運転と違い、SASには睡眠の予兆がないため、被告は運転を避けることができなかった。また、SASの症状を疑い、クルマの運転を行わないという義務も無かった」として、禁固2年の求刑を退け、被告に無罪判決を言い渡した。

裁判長は判決後、被告に対して「事故を起こし、相手を負傷させた事実は変わらないので反省するように」と説諭を行っている。

今回の公判では、通常の居眠りについては「事前に自覚症状があるもの」、SAS原因では「自覚症状がないもの」とも認めることとなった。全国には同様の事例がいくつかあり、この判決が別の公判での判断にも影響を与えることになりそうだ。

《石田真一》

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