山陽道のトンネル衝突、運転手に実刑…責任切り分け

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2004年8月、兵庫県内の山陽自動車道で追突事故を起こし5人を死傷、その後に起きた火災で他のクルマの運転者らに軽傷を負わせたとして業務上過失致死傷と道路交通法違反(過労運転)の罪に問われた32歳の男に対する判決公判が8日、神戸地裁で開かれた。

裁判所は被告に対し、懲役5年の実刑を命じている。

問題の事故は8月7日に発生している。午前6時ごろ、赤穂市木津付近の山陽自動車道上り線・高山トンネル(全長1378m)の内部で、走行車線でパンクしたタイヤの交換作業を行っていたクルマに、後続の大型トラックが減速せずに激突した。

クルマは大破。後部座席に乗っていた幼児3人を含む5人が死亡した。

また、クルマは衝撃で燃料タンクも破損。これに引火して激しく炎上し、トンネル内に取り残されて走行不能になったクルマの乗員など9人が煙を吸い込み、喉に炎症を起こすなどの軽傷を負っている。

これまでの公判で被告弁護側は「発生要因のひとつに会社側からの過重労働の指示や、運転者が会社からの指示をを容易に断れないという社会的な背景があった」として、情状の酌量を求めていた。

しかし8日に開かれた判決公判で、神戸地裁の浦島高広裁判官は「安全運転の第一責任は常に運転者が負うべきである。被告は体調の悪化を認めながら、運転を止めなかった」として、被告が勤務していた運送会社からの指示があったことは容認したものの、責任については切り分ける判断を行った。

その上で、浦島裁判官は「注意散漫な状況で運転を続け、多数の死傷者を出した責任は重大。死亡した5人の苦痛や悲しみ、無念さは想像するに余る。被告が職業ドライバーだったことを勘案すれば、過失の程度は著しい」と認定。被告に対して懲役4年の実刑判決を言い渡している。

今回の裁判では、過重な勤務を命じた会社側の責任を裁判所がどのように判断するか注目されていたが、この部分の厳密判断を行わず、「事故発生の責任は運転手にある」という、これまで通りの判断を貫く結果になった。

《石田真一》

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