兵庫県警は26日、制限速度を遵守していては間に合わない配達時間を従業員に命じ、速度超過違反を恒常的に行わせていたとして、度労交通法違反容疑で、兵庫県や大阪府内にあるバイク便4社に対する家宅捜索を行った。
バイク便の会社にメスが入れられるのは、全国的にも初の事例となる。
兵庫県警・交通捜査課によると、道交法違反(速度超過の下命および容認)で家宅捜索の対象となったのは、いずれもバイクで荷物を輸送する“バイク便”の会社4社の5拠点。
調べによると、この4社は従業員のライダーに対して、「(神戸市内から)大阪まで1時間以内でよろしく」などと、道路混雑時には制限速度を守っていては到達できないような時間を指示。恒常的な速度違反を行わせていた疑いがもたれている。
ライダーの中には実際に18-28km/hの速度違反で摘発されたり、すり抜けを行っている最中に接触事故を起こしたり、歩道を走行するケースも確認されている。
バイク便ライダーによる無謀走行については2003年末ごろから警察に通報が相次ぎ、昨年1年間だけでもバイク便のライダーが関わる人身事故は23件も発生している。こうした理由もあり、同課が内偵に着手していた。
この結果、今回の摘発対象となった1社に勤務するライダーが、昨年7月に神戸市内の国道43号線で22km/hオーバーの速度違反で検挙され、その際に行った事情聴取から会社側の無理な指示が明らかになった。
その後も同様の摘発が続いたため、警察では「速度違反はライダーの判断ではなく、事実上の命令だ」と判断し、今回の捜索を決めている。
会社側は警察の事情聴取に対し、これまでは「会社として速度違反の指示はしていない。速度違反があったとしても、それは従業員の不注意だ」などと説明してきた。だが、その一方でこれまでに検挙されたライダーは「時間通りに走らないと、解雇される恐れもあり、速度違反を前提とした到着時間は会社の指示だった」と証言している。
両者の主張は真っ向から異なるが、警察では今回の捜索で顧客からの依頼書や、帳簿などを押収。どのような指示が行われていたのかを調べる方針だ。
バイク便は「クルマでは実現できないスピーディな配達」を特長としているが、ここ数年で新規参入が相次いで過当競争傾向にあった。料金面での競争には限度があるため、多くの会社はスピードで争うようになり、これが速度違反の指示につながったとも考えられている。