●その6:ニッポンは特殊? 世界の車検事情
ここで、ちょっと日本を離れ、世界の車検期間(乗用車)を探ってみよう。国交省資料によると、ドイツは「3年-2年-2年」。これはもともと、日本の車検制度がドイツをお手本にしたとされる以上、当然といえる。すでに紹介したフランスは「4-2-2」、スウェーデンは「3-2-1-1」と変則的だ。このほか、スイスは「4-3-2-2」、ベルギー「4-1-1」、イタリア「4-2-2」と、初回4年という国は意外と多い。
アメリカは、定期点検や車検が義務づけられていないという先進国のなかでは珍しい存在だ。アメリカでは自賠責保険もないが、いったん事故を起こすと訴訟沙汰になり、自己に非があると莫大な損害賠償をされるのはご承知の通り。アジアなど途上国でも車検がないケースが多いが、近年は環境保護や事故防止の観点から、大半の国で車検必要論が出ている。
●その7:長ければイイってもんじゃない
さて、再び舞台は日本。規制改革・民間開放推進会議は本来、「車検制度の抜本的な見直し」を求めていたが、具体的な措置として答申で書いたのが車検期間の延長。つまり会議側は「規制改革=車検期間延長」と考えているわけだ。
しかし、よく考えてみると、期間が延びてトクするのは「検査代行料」くらい。毎年の自動車税はもちろん、重量税や自賠責、さらには定期交換部品代だって安くなるとは限らない。最近のクルマは確かに壊れなくなったが、油脂類を含め、部品のなかには定期点検・交換を前提に使われているものも多く、こうした作業をサボれば当然のように壊れる。
推進会議は、3月に向けて世論の高まりを期待しているフシがあるが、国民は車検延長に具体的なメリットを感じないためか、さめた見方をしているようだ。実際、読者のなかでこの問題に関心のある人がそれくらいいるだろうか? この点が推進会議の誤算だったようだ。
●その8:車検に寄生する各種制度…自賠責に税金
とは言え、「車検費用は高い」ことも事実。なぜ高いのか……賢明な読者はおわかりだと思うが、自動車重量税、自賠責などの“法定費用”が大きな負担になっている。本来、車検は自動車の安全と環境(排ガス)性能をチェックするだけで、税金や保険とは何の関係もない。
しかし、公道を走る車すべてに義務づけられている車検は、こうした税金や保険を支払わせるのに格好の仕組み。何しろ、支払い証明がなければ車検を受けられないのだから。今後は、さらに駐車違反の反則金納付チェックという“新機能”も加わる見通しだ。
確かに過去には、車検を口実に不必要な整備を行うボッタクリ業者も多く存在した。しかし、価格やサービス競争が激化している今、「車検は薄利多売」というのが業界の常識という。
くしくも04年12月、「赤字続き」という理由で自賠責保険料の引き上げが決まった。また、自動車重量税は実質的に道路整備に充てられ、乗用車に関しては本則の2倍という暫定税率が生きている。規制緩和の趣旨から言えば、任意保険制度の充実を根拠に赤字続きの自賠責をとっとと廃止し、無保険車は莫大な損害賠償という“自己責任”を取らせるのが筋だ。重量税も本則に戻せば負担は2分の1になり、これだけで数万円の“車検費用”が浮く。今の制度は、こうした“寄生虫”の方がはるかに問題で“規制緩和”の余地があると言えよう。
●その1:「初回6年、継続4年」…日経報道に業界が腰抜かす
●その2:03年は「データ収集」で手打ち。04年に対決が再燃!
●その3:推進会議側の主張…「国民負担の軽減」「クルマは壊れなくなった」
●その4:国交省の本音…「本当は延長したくない」
●その5:04年は“引き分け”、ファイナルマッチは05年3月!?
●その6:ニッポンは特殊? 世界の車検事情
●その7:長ければイイってもんじゃない
●その8:車検に寄生する各種制度…自賠責に税金
●その9:「車検に通ったから大丈夫」というユーザー意識
●その10:エレクトロニクス化にITの波…理想の車検像とは