【山陽道夜行高速バス炎上】その3…走行車線に座り込む

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【山陽道夜行高速バス炎上】その3…走行車線に座り込む
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14日未明、兵庫県内の山陽自動車で夜行高速バスが中央分離帯に接触、全焼した。乗り合わせた読者は、無事車外に避難し、携帯電話で緊急通報しようとするも、なかなかつながらない。

 ………………

電源は入ったが、今度はなかなか110番をプッシュできない。一瞬119番にすべきかとも考えながら、111番や199番といった間違いを繰り返し、何とか110番通報に成功した。

時刻は3時51分。応答員(女性)が出た。「どうされましたか? 事故ですか事件ですか」と。筆者は上ずるであろう声を努めて冷静にして話そうとした。が、「落ち着け」という言葉はとうとう頭に出なかった。

避難している人達の脇に「45.2」と記載されたポストが見えた。それをみて「東名高速の45.2キロポスト…」と言った瞬間、誰かが「ここは東名じゃない。…えっと名神、いや、山陽道だ」と大きい声で言った。そのことを伝える。バスがどんどん炎上する。そのことも伝える。

初め冷静で標準語を話していた対応の女性もだんだんとエキサイトしてきたらしく、恐らく普段使っているであろうお国の関西方面のなまりが出始めた。「バスの事故ですね、もう通報が入っております! 今、消防と救急が向かっています。ケガ人の数は分かりますか?」。そんなのは私が分かるはずもない。

この頃、ひとりの女性が荷物をとりにバスに向かおうとしていた。私はやめたほうがいい、と制止した。その女性の足を見ると足はスリッパ姿、寒いのだろうか下半身にスカートのように毛布を巻いていたのが記憶に残っている。

外は相当に寒いはずなのだが、筆者はTシャツのままでも寒いとは全く思わなかった。緊張をしているせいだろうか。路側帯を勢いよく流れる液体がバスの燃料で軽油だということを避難している方に叫ぶ。

その中、乗務員が誰かに携帯で話していた。「なんで通じないんだ、ここは電波が悪いのか」や「もう電池がないんだ、切るぞ」と非常に乱暴な口調で話したあと、「〇〇はどこにいるんだ、何をやっているんだ!」と苛立った口調で他の乗務員を探していた。このころ、まず消防が、そして警察が来た。

バスは完全に炎に包まれ、巨大な火柱になり、不定期に「ポン!」と小爆発を繰り返していた。火勢と反比例するように避難していた乗客(筆者も含めて)は冷静になってきた。燃えるバスに消火活動をしている消防・警察の方をずっと見ているだけだった。

筆者は靴を履くことにした。足は軽油まみれだ。ハンカチで足先を拭く。当然、高速道路走行車線に座り込んでだ。こんな所で座り込んで靴を履くという行為はそうそう出来ることではない。

そして上着を着る。衣服が軽油に浸かっていたということも、また臭いも全く気が付かなかった。さきほど車内からもって来た毛布を思い出し「寒い方はいませんか! ここに毛布があります」と叫んだ。やっとまわりのことに気付くように頭が切り替わってきた。

自宅を出てすぐに買ったペットボトルの、飲みかけお茶を車内からもちだしたことを思いだし一口飲む。ああ、確かにお茶の味だと妙に実感した。事故発生から時間はまだ30分も経っていない。「ハハハ。まだ夜明け前なんだ」と自分に言い聞かせた。

《レスポンス編集部》

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