「攻撃される」という妄想が悲惨な事故を起こした

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静岡地検沼津支部は20日、昨年9月に静岡県小山町内の東名高速上り線・足柄サービスエリアの出口付近で衝突事故を故意に起こし、被害を確認しようと車外に出た運転者ら2人を死傷させて殺人罪で起訴された25歳の男を同日までに不起訴にした。

精神鑑定の結果、心神喪失状態と判断されたため、と説明している。

この事故は昨年7月12日の午後11時55分ごろに発生している。静岡県小山町桑木付近の東名高速上り線・足柄サービスエリア出口の加速車線で、本線に向けて加速進行していた24歳の男が運転するクルマが突然急ブレーキを掛け、避けきれなかった52歳男性の運転するクルマがこれに突っ込む形となった。

急ブレーキを掛けたクルマは弾みで本線の追越車線上まで飛ばされたが、追突してしまった側の運転者と同乗者が車外に出て被害状況の確認をしていたところ、このクルマが再び急発進して2人に向かって突進。2人を次々にはねた。

クルマはさらに本線上を逆走。追越車線を走ってきた大型トラックと正面衝突して大破し、ようやく停止した。

この事故で暴走したクルマにはねられた男性1人が死亡、女性1人が重傷。暴走したクルマを運転していた男も一時意識不明の重体となった。

警察では意識不明の状態でアクセルを踏むなどして暴走した可能性も考慮し、調べを進めてきた。そして暴走車の進んだコースは車外に出ていた2人を狙っていたとしか思えないこと、逆走を開始する直前、本線上で一旦停止するなど、不可解な点が数多く見つけられた。

このため意識を取り戻した男から事情を聞いたところ、「後続車に追い掛け回されているような気がして怖くなった。あいつに攻撃される。だから脅してやろうかと思った」などと供述。

事故の発端となった急ブレーキも「危害を加える目的で使用した」と大筋で認めたことから、男を昨年9月に殺人容疑で逮捕した。

しかし、検察での取り調べの際にも男は意味不明の発言を繰り返したことから精神鑑定を実施。この結果、男が事故当時には心神喪失状態だった可能性が高いと判断され、事件の責任は問えないとして不起訴になった。

不起訴処分の決定と同時に男は静岡県内の病院に措置入院の手続きが取られている。

《石田真一》

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