捏造調書は採用せず、暴行の事実のみを認めて有罪

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昨年3月、兵庫県西宮市内で発生したバス運転手に対する暴行事件で、運転手の胸ぐらをつかむなどして暴行罪に問われた54歳の男に対する判決公判が16日、尼崎簡裁で開かれた。

取り調べを担当した警察官が虚偽の実況見分調書を作成したとして、証拠能力が問われた異例の裁判となったが、裁判所は他の証拠を採用するなどして男に罰金20万円の支払いを命じている。

この事件は昨年3月13日に発生している。当時58歳と53歳の男が尼崎市交通局の運行する路線バスを利用しようとした際、バスが接近してくるのに気づいて、バス停の手前で乗り込む意思を示すために手を振り、バス停の方まで歩み寄ろうとしていた。

ところがバスの運転手は2人の存在に気づかず、正規のバス停には誰もいなかったことからそのまま通過してしまった。

2人はこれに腹を立て、バスが直後に信号待ちで停止した際に、車体の後部を蹴り上げるなどした。これに気づいた運転手が車外に出てくると、罵声を浴びせながら胸ぐらをつかみあげるなどの暴行を行ったとされる。

2人は駆けつけた警察官に逮捕されており、容疑が固まっていることから事件は単純に解決するものと思われたが、その後の公判で事態は紛糾することになる。

事件の実況見分調書を作成した兵庫県警・尼崎北署の警部補は、実況見分には立ち会っていないにも関わらず、立ち会ったことにして実況見分調書を作成した。

この調書では容疑者(後に被告)となる2人がバスの接近を認知し、手を振った地点がバス停から21.5m付近となっていたが、実際には30〜40mと倍近く離れていた。

58歳の男の刑が確定した後にこの事実が明らかとなり、続けて行われた53歳の男の公判では検察が途中でこの調書を証拠から取り下げ、調べ直した検分調書を新たな証拠として申請する手続きを行った。

このため弁護側は「検察は検分調書が捏造された事実を知りながら起訴した」として、公訴棄却を求める事態になっていた。

16日に行われた判決公判で尼崎簡裁の矢野隆裁判官は「新たに提出された検分調書だけではなく、運転手の供述調書などもあり、証拠採用に問題はない。取り下げられた調書についても検察官自身は捏造の事実を知らされておらず、事実を知った上で起訴に至ったとは考えられず、違法性もない」として、男に対して求刑通り罰金20万円の支払いを命じた。

弁護側は「公訴の進行自体に違法性がある」として控訴する方針。

《石田真一》

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