路上駐車を巡って暴力団員とトラブルになった大学院生が拉致され、その後に暴行を受けて死亡したことは警察の初動捜査体制に問題があったからだとして、兵庫県(県警)と、暴行を加えて殺害した暴力団員ら7被告に総額1億4000万円の損害賠償を求めた民事訴訟の第一回口頭弁論が15日、神戸地裁で開かれた。
県は「警察が捜査を放置した事実はない」と主張として全面的に争う姿勢を見せており、暴力団員側も「暴行と男性の死には因果関係がない」として棄却を求めた。
この事件は昨年3月4日未明に起きた。神戸市西区の路上で駐車を巡るトラブルから、山口組系末原組の組員9人と、現場近くに住む大学院生が口論に発展。大学院生は警察に通報したが、現場に最も近い交番で当直勤務に就いていた警察官は仮眠しており、離れた場所にある別の交番から警察官を現場へ派遣した。
大学院生はその間に暴行を受け、さらには暴力団員が乗ってきたクルマに監禁された。警察官は通報者が現場にいないことを不審にも思わず現場を離れたが、その後この大学院生は神戸市内の山中などで激しい暴行を受けて殺害されている。
事件発生直後から初動捜査の遅れがなく、現場で事件処理を担当した警官が決められた手順での捜査を行っていれば大学院生の殺害を未然に防げたのではないかと指摘されてきた。兵庫県警も後に初動捜査態勢の不手際など6項目のミスが生じていたことを認め、県議会でそれを報告。再発防止を誓っている。
遺族はこれを受け、「県警の捜査に不手際があったことは明らかで、早期発見のチャンスを逸したことで(大学院生が)拉致監禁され、殺害された。責任の一端は県警にあり、暴行を行った当事者もその責任は免れることが出来ない」として、兵庫県(県警)と暴行を行った暴力団員を相手に総額1億4000万円あまりの損害賠償を求める民事訴訟を神戸地裁で起していた。
15日に神戸地裁で開かれた民事訴訟の第一回口頭弁論の席上、被告となった県は「現場到着が遅れた事実はない」と主張。大学院生が拉致された直後に緊急配備態勢を敷かなかったことについては「当初は殺人事件に発展するとは想定しておらず、事件発生の予測も困難だった」と県側に責任が無いことを訴えた。また、これに加えて「県警が組織的な捜査を漫然と放置した事実はない」などと反論、全面的に争う姿勢を示した。
また、大学院生に暴行を行い、殺害したとされる暴力団組長らも「暴行を加えろとは命じたが殺害するつもりはなく、暴行と大学院生の死に直接の因果関係はない」と主張して裁判所に請求の棄却を求めるなど、こちらも全面的に争う姿勢を見せている。