警視庁は11日、1歳3カ月の女児を駐車場に置いたクルマの中に長時間放置し、熱中症による脱水症状で死亡させた30歳の女を保護責任者遺棄致死容疑で書類送検する方針で捜査を行っていることを明らかにした。女児は摂氏70度以上の室温だったと推定されるクルマに約5時間放置されていた。
警視庁・高尾署の調べによると、この事故は今月5日に発生している。同日の午後3時すぎ、東京消防庁の救急隊員から警察に対して「1歳3カ月の女児が熱中症で死亡したが、車内への放置が原因らしい」との通報が寄せられた。
警察が女児の母親である30歳の女性から事情を聞いたところ、約5時間に渡る長時間の放置を認めたため、保護責任者遺棄致死容疑で検挙し、事情を聞くことになった。
この女は事故当日、1歳3カ月の次女が高熱を発していたことに気づいたが、いつもこの女児を預けている保育園が発熱を理由に預かることを拒否したため、八王子市内にあるパート先のファミリーレストランに連れて行き、駐車場に置いたクルマの中に布団を引いた状態で寝かしていた。
しかし、女はエンジンを停止してエアコンを切り、クルマの窓も閉め切った状態で放置。勤務開始から数時間後に様子を見に行ったが、その際には寝ていたために大丈夫だと判断。その後も勤務を続けた。
午後3時すぎ、勤務を終えた女がクルマに戻った際、女児はすでに心肺停止の状態だったが、女はすぐに消防への通報を行わず、クルマで一旦自宅まで戻り、その段階でようやく通報した。消防隊員が駆けつけたときには死亡から1時間程度は経過しているような状態だった。
当日の八王子の最高気温は午後1時の段階で摂氏29.1度。女児が放置された駐車場は炎天下にあり、クルマの色は熱を吸収しやすい黒色だった。窓も完全に締め切った状態で、この状態から推定される車内温度は同70〜80度。しかも女児は布団にくるまれた状態であり、想像を絶する負担が生じていたとも考えられる。
女は警察の取り調べに対して「不運が重なった。女児が熱を出した段階で仕事を休めば良かったが、クビになるかもしれないと思って出勤した。当初は午後1時に勤務を終える予定だったが、交代のパートが遅刻したため、残業することになったのが悪かった」などと供述しているという。