ストーカーがクルマへの細工……「明確な殺意」

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一方的に好意を寄せた女性が結婚したことに腹を立て、クルマのブレーキな細工を行ったり、家屋内に侵入して電気ポットに毒物を入れるなどして女性と夫の殺害を図り、殺人未遂罪に問われた34歳の男に対する判決公判が6月30日、山形地裁で開かれた。裁判所は「確定的な殺意があった」という検察側の主張を認め、懲役8年の実刑判決を言い渡している。

判決によると、被告の男は1991年ごろに被害者の女性と同じ会合の参加者として知り合ったが、直接の接点があったことはないにも関わらず、一方的な好意を持ち続けていたという。10年後の2001年になってから被告は突然電話を掛けてきて、女性に交際を迫ったが、女性が婚約していることを告げるとその際にはおとなしく引き下がったが、この直後から自宅付近での徘徊が目立つようになった。

被告は2002年11月ごろに女性が結婚した事実を知り、その頃から嫌がらせ行動が一気にエスカレートした。最初は「毒物を飲料水などに混入して殺そう」と思いつき、同年11月下旬から12月中旬ごろにかけ、山形市周辺の県立高校3校に侵入。硫酸水銀を精製するための薬品類や試験管など計40点を盗み出し、薬物を製造した。

男は12月下旬の二回、女性宅に侵入を図り、致死量の15倍に当たる29gの硫酸水銀を炊飯器や電気ポット、冷蔵庫に入っていた飲料などに混入。殺害を図ろうとした。

また、これと並行して女性が使っていたクルマのタイヤをパンクさせる、ブレーキパッドに油を塗布する、ホイールのボルトを緩めるなど、重大な事故を引き起こしかねない悪質な細工を施したという。

夫妻はポットから異臭が漂っていることや、クルマに細工が施されていることに気がついて警察に通報。男は今年1月に女性宅から下着を盗んだ容疑などで逮捕されているが、一連の行動が殺人未遂に当たると判断。殺人未遂容疑で逮捕・起訴していた。

30日の判決公判で山形地裁の木下徹信裁判長は、被告の動機を「想像の世界では自分と交際し、決して裏切ることのなかった女性が現実では別の男性と結婚するなどして裏切ったことが許せず、幸せな生活に対しての嫉妬心と憎しみを抱き、これが殺意に発展したもの」と断定した。

さらに「毒物の危険性を十分認識しながらも、致死量の15倍という量を摂取させようと計画したり、自動車に細工を施して事故の誘発を図るなど、一連の行動に確定的な殺意があったことは明白だ」として、被告側が主張していた「未必の殺意」を退けた。

その上で裁判長は「被告は自らの世界に閉じこもり、現実との解離が許せずに犯行に至るなど、動機は自己中心的で陰湿極まりない。毒物製造の知識もインターネットで学習し、材料を調達するために高校へ侵入するなど犯行は極めて計画的で執念深く、極めて悪質。被害者側には何の落ち度も無く、被告の身勝手な行為によって生じた精神的衝撃と苦痛は極めて大きい」と断罪。懲役10年の求刑に対し、懲役8年の実刑判決を言い渡した。

《石田真一》

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